鉄道不通で自動車が使えない? 中央線被災の影響とは

貨物列車は長野県民のライフライン

 長野県は内陸にあるため、同県で消費される石油類は78.2%(2008年度)が鉄道で、臨海部の石油基地から輸送されてきます。

 神奈川県横浜市の臨海部にある根岸駅から長野県上田市の隣、坂城町にある坂城駅へは1日最大3往復、石油を輸送する貨物列車が運行されています。

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中央線を行く石油貨物列車。ガソリンのほか灯油なども輸送しており、長野県民のライフラインになっている。

 また三重県の四日市駅などからも長野県松本市の南松本駅まで、1日最大8往復の石油輸送列車が走っています。

 今回の災害で中央線が不通になったことで、この四日市の製油所から南松本駅へ向かう貨物列車が運転できなくなりました。つまり長野県内への石油、ガソリン類の供給量が、大幅に減少するおそれがあったのです。

 そこでJR貨物は、不通の影響を受けない神奈川、千葉県内の製油所から長野県内に向け、石油貨物列車の臨時運行を7月16日(水)までに開始したと発表。これにより、長野県内でのガソリン不足は回避される見込みです。

 ちなみに東日本大震災においても線路が被災し、石油貨物列車がストップ。物資不足と寒さに耐える東北へ少しでも早く石油を送るため関係者が不眠不休の努力を続け、普段は貨物列車を走らせていない路線を使い、東北へ石油を届けました。

 日本の鉄道貨物輸送は往時と比べ衰退し、国内貨物輸送のうち3.9%のシェアしかありません。自動車は63.9%、海運は32%、航空は0.2%です(2009年度)。しかしその存在が長野のようにライフラインになっている場合がありますし、鉄道貨物はエネルギー消費量が少ないなどのメリットもあります。日本全体で鉄道貨物の維持、活用方法を考えても良いのではないでしょうか。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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