7人中5人が「乗り鉄」 まもなく見納め未成線バス

乗ってみると車内にも車外にも……

 この専用道を走る路線の廃止まで1ヶ月を切った2014年9月初旬、そのバスに乗ってきました。乗車したのは、平日の15時35分に五條バスセンターを発車する西吉野温泉行きです、

 バスは五條バスターミナルを、筆者を含めて5人乗せて発車。次の五条駅で2人加わります。この合計7人のうち1人は約10分後、県立五條病院前で下車。そのすぐあと、バスは未成線を転用した専用道へ進入ます。

 すると、そのときでした。バス専用道へ進入する瞬間を撮ろうと、6人中5人の乗客がカメラを取り出し、撮影を始めたのです。もちろん筆者は5人に入ります。

 つまりこのバスは、病院で降りた1名の中年女性と、専用道へ入る瞬間にカメラを出していなかった老人女性の1名以外、このバスが目的で乗った人ばかりだったのです。またこののち、専用道の終点である専用道城戸バス停まで乗降客はありませんでした。

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専用道と一般道が交差する「踏切」にはレンズを向ける撮り鉄の姿が。看板には「一般車両等の通行禁止」の文字。

 車内はそうした「乗り鉄」ばかりでしたが、車外も「撮り鉄」が目立ちました。専用道は一見、普通のどこにでもある細い道です。そこへ何人もがカメラを向けている光景は、そうあるものではないでしょう。よって正直、少々奇妙な印象を持ったのですが、もしその道が線路だったらと考えたら、非常に良くある光景でした。

 廃止になる列車や路線を目当てにする鉄道ファンのことを、「葬式鉄」と呼ぶことがあります。この鉄道未成線の専用道を行くバスも、それで賑わっていました。もっとも、ここで「乗り『鉄』」「撮り『鉄』」「葬式『鉄』」と表現することが果たして正しいのか、難しいところですが。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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