不動産会社の鉄道 開業以来32年間無事故を達成

不動産会社が造った鉄道が、開業以来32年間無事故を達成し国交省から表彰されました。鉄道会社の不動産部門は珍しくありませんが、「不動産会社の鉄道」とはどういうことなのでしょうか。

宅地開発と合わせて鉄道を建設

 鉄道会社による不動産開発は、まったく珍しいことでありません。鉄道会社がその鉄道事業と合わせ住宅地開発などの不動産事業、百貨店やレジャー施設等の運営を行い、相乗効果でそれぞれ発展させるビジネスモデルは明治時代から存在。特に阪急電鉄(大阪市)の創業者である小林一三の活躍が有名です。小林は「乗客は電車が創造する」として、需要があるところに鉄道路線を設けるのではなく、鉄道路線を活用して様々な開発を行い、需要を創出していきました。同電鉄沿線の兵庫県宝塚市に設立された「宝塚歌劇団」も、そうした背景から設立された面があります。

 ですが逆に、不動産が本業の会社によって運営されている鉄道も存在することは、あまり知られていないかもしれません。山万(東京都中央区)の鉄道事業部が千葉県佐倉市で運営する「山万ユーカリが丘線」です。

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山万ユーカリが丘線の列車。ニュータウンの名前にちなみ「こあら号」の愛称がある(画像:山万)。

 山万は1971(昭和46)年から、千葉県佐倉市でニュータウン「ユーカリが丘」の開発をスタート。そのニュータウン内での移動手段を考えるにあたり、自社で開発した土地にみずから鉄道を建設、運営すれば鉄道の建設コストを下げられるほか、ニュータウンの価値上昇にも繋がると判断。1982(昭和57)年11月2日に「山万ユーカリが丘線」を開業させました。宅地開発と合わせて行われた鉄道建設工事は、宅地に向かない斜面を利用するなど土地の有効利用が図られ、当時の相場の6分の1程度である約40億円で完成したといいます。またニュータウン内すべての住居は、徒歩10分以内で駅にアクセスできるようになっています。

 このちょっと変わった経歴を持つ鉄道が2014年10月31日、1982年の開業から32年間の無事故運転を達成したことから、国土交通省関東運輸局長から「鉄道等の運転無事故事業者」として表彰されました。

 表彰を受け山万は「これからも『安全・安心の街づくり』をモットーとし、ユーカリが丘線の安全運行に努めてまいります」とコメント。「安全・安心の街づくり」が柱という、本業が不動産会社らしい内容です。

 またこれを記念し、同社では2014年10月31日から12月31日まで「記念硬券乗車券」を発売。販売場所はユーカリが丘駅と公園駅のほか、通販も行われます。500枚限定(大人200円 小人100円)です。

 ちなみにこの山万ユーカリが丘線はゴムタイヤで走る、いわゆる「新交通システム」。ワンマン運転で、線路への転落を防止するホームドアは設置されていません。

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