踏切もコードレス時代 JR東日本が「無線踏切」使用開始

列車が自分の位置と速度、能力を計算して踏切に指示を送信

 それにはJR東日本が仙石線で導入、開発を続けている「ATACS(Advanced Train Administration and Communications System)」という列車制御システムの存在があります。

 従来、列車が線路上のどこを走っているのか検知するにあたって、「軌道回路」と呼ばれるシステムが用いられてきました。簡単にいえばレールを使って電気回路を構成し、その回路のどこに列車がいるか、検知する形です。しかしこの方式は地上設備が大掛かりになり、メンテナンスの手間もかかるといった欠点があります。

 そこでJR東日本が生み出したのが「ATACS」です。このシステムで列車は、線路上に設置されている機器や自分の速度計から現在位置を算出。その情報を無線で「ATACS」の地上装置へ送ります。各列車がこのように無線で自分の位置情報を送ってくるため、路線のどこに列車がいるか、一目瞭然です。

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「ATACS」によって無線で制御される踏切の仕組み(画像:JR東日本)。

 「ATACS」を使った「無線踏切」では、列車が自身で把握しているそうした位置や速度の情報、また自分の車両性能を考えて、踏切までの到達時間を自ら計算。列車が前方の踏切に対し無線でその作動を要求し、踏切通過後は「ATACS」地上装置が無線で踏切の作動を停止させるのです。列車自身が位置を把握し伝達できるため、線路上へ踏切用の列車検知装置を設ける必要もありません。

 ちなみに「ATACS」はそうして集まった列車の位置情報を元に、各列車に対して前の列車に接近したから停止しろといった指示を送る「信号システム」でもあります。そうした「停止」などの信号指示はやはり無線で送られ、運転台に表示されるため、「ATACS」を導入している路線では線路脇に信号機がありません。

 現在、「ATACS」を導入している路線は仙石線のみですが、JR東日本は2017年秋からは埼京線の池袋~大宮間でも導入すると発表しています。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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