ノーエスケープゾーン大幅拡大 2016年、革新の空対空ミサイル

航空自衛隊機にも搭載される?

「ミーティア」は、「ダクテッドロケット」ないし「ラムジェット」と呼ばれるエンジンを持ちます。従来型のミサイルのロケットエンジンは、燃料と酸化剤を混ぜた固体の推進剤を燃焼することで推進力を発していましたが、「ミーティア」のダクテッドロケットは大気中の酸素を取り込み、燃焼に利用します。すなわち燃料に混ぜていた酸化剤が不要となり、「アムラーム」と同サイズながら、搭載可能な燃料量は倍以上にもなりました。

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戦闘機「ラファール」に搭載された「ミーティア」。空気を取り込むエアインテークが特徴。空気中の酸素を燃焼に用いることで酸化剤を不要にした(写真出典:ダッソー・アビアシオン)。

 またダクテッドロケットはその機構上、「推力調整が容易」という特徴があります。つまり、初期加速後は燃料消費を抑えマッハ3~4程度で巡航し、標的に接近したところで再加速して、高い速度の状態で標的に命中させる、という方法も可能となりました。

 この新しい推進装置によって「ミーティア」のノーエスケープゾーンは、標的と向かい合った状態での発射で従来型(おそらく「アムラーム」のこと)の3倍、追跡状態ならば5倍に拡大している、と宣伝されています。

 誘導方式はアクティブレーダー誘導。ミサイルの先端に備えられたレーダーによって敵機を補足し、自律的に誘導を行えます。実際はノーエスケープゾーンに比べミサイルのレーダーは視程が短いので、ある程度まで標的へ接近するまでは発射母機による誘導を必要としますが、第三者を含めたデータリンク誘導が可能であるため、発射母機は僚機に誘導を任せて即座に退避することもできます。

 この新機軸の「ミーティア」は、戦闘機「グリペン」「ラファール」「ユーロファイター」、F-35「ライトニングII」への搭載を見込んでおり、中国やロシアでも同種のダクテッドロケット型の空対空ミサイルを開発中です。また、アメリカにおいても計画中です。

 日本も「ダクテッドロケット飛翔体」として基礎研究を実施しており、また「ミーティア」性能向上型に関する共同研究に参画しています。将来、「ミーティア」ないし同種の国産ミサイルが、航空自衛隊の戦闘機にも搭載される可能性は高いといえるでしょう。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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