北の核実験探る日米の航空機、その姿

米軍は特別な「核実験監視機」を投入

 米・ワシントン・ポストは北朝鮮が核実験を発表した1月6日(水)、「米空軍がWC-135観測機を派遣する模様だ」と報じました。

 旅客機のボーイング707と原型を同じにするWC-135は「コンスタント・フェニックス」の愛称を持ち、前述のT-4と同様のモニタリング活動を実施する機体です。

 米軍は世界各地で核実験が行われるたび、必要に応じて米本土からこのWC-135を派遣していますが、今回、在日米軍基地では動きを見せていません。嘉手納基地(沖縄県)から調査飛行を実施する可能性が高いと推測されましたが、現在どこにいるのかは不明です。

 WC-135は、「気象(Weather)」を意味する「W」の頭文字を付けた特殊任務の航空機です。公には大気観測や気象観測を目的とした航空機を意味しますが、実体は偵察機部隊(ネブラスカ州・第55航空団)に配属されており、知る人ぞ知る「核実験監視機」なのです。

 WC-135は2機が存在。民間技術者を含めた専門チームが乗り込み、上空で収集した浮遊塵データをすぐに機内で分析する能力を持っています。その分析結果は、衛星通信などを経由してリアルタイムでアメリカ政府に伝えられ、大統領を中心とした国家戦略に使われることになります。

 今回の北朝鮮核実験では、アメリカ政府がいち早く「水爆」を否定しましたが、地上での地震動による観測だけでなく、こうした航空機による調査結果が生かされた可能性も十分あるでしょう。大気収集活動は韓国軍も行っているほか、別の米軍機、または民間に調査を委託した航空機なども実施しており、調査飛行は秘密裏に行われていると考えられます。

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アメリカ空軍のRC-135観測機。機体の横に集塵装置が取り付けられている。(写真出典:アメリカ空軍)。

 なお、核実験が報じられた1月6日の朝、各種電波や通信内容を傍受するRC-135電子偵察機が嘉手納基地を離陸したことが確認されました。米軍は朝鮮半島周辺の上空にこのRC-135を待機させ、情報収集をしていたと見られます。

【了】

Writer: 坪田敦史(航空ジャーナリスト)

航空ジャーナリスト。パイロットの資格を持つ。航空会社、空港、航空機などの記事執筆・写真撮影を20年以上続ける。『わかりやすい旅客機の基礎知識』(イカロス出版)、『ヘリコプターの最新知識』 (SBクリエイティブ)など著書多数。最近はボーイング787、LCC、オスプレイといった航空関連トピックで、テレビや新聞でもコメンテーターとして活躍中。

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