現代戦闘機、宿敵は「フリーズ」? 4時間に1回、シャットダウン

そこにある、現代戦闘機の根本的な問題

 しかしながら2016年5月現在、「ブロック3i」は大幅に改善され、当初の3倍という安定性を確保することに成功したと、アメリカ国防総省のF-35統合プログラムオフィスは伝えます。一般的な戦闘機の任務はどんなに空中給油を重ねても、通常は8時間から10時間程度が限度なので、12時間に1度の再起動ならば許容範囲とみなすことができます。

 既存の量産型F-35Aは、ミッションシステムに「ブロック2B」を搭載していますが、今後「ブロック3i」へアップグレードが行われる見込みであり、それが完了した段階で「F-35Aの初期作戦能力獲得」が宣言されることになるでしょう。

 ミッションシステムのソフトウェアは現代の戦闘機にとって「キモ」ともいえる最も重要な部分であり、同時に最も開発が困難な要素です。F-35の開発スケジュール遅延は、“F-35という機体”そのものの設計が問題であったわけではありません。

 もし仮に、アメリカやイギリスなどの国々を中心に行われた「統合打撃戦闘機(JSF)計画」の機種選定において、このF-35ではなく、その座を同機と争ったボーイングX-32が採用されていたとしても、全く同じ問題に見舞われていたに違いありません。

「ミッションシステムの開発によるスケジュールの遅延」は、現代の戦闘機が抱える根本的な問題といえるでしょう。そして戦闘機が退役するまで半永久的に、ソフトウェアの改善は行われ続けます。

【了】

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Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

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2件のコメント

  1. OSの問題だけならシステムを二重化&クラスター化して交互に再起動すれば良いだけなんじゃないか?

    つまり、そんなレベルの問題じゃないって事なんだろうけど。

  2. OSではなく「ブロック3i(アプリケーション)」の問題と書いてある。
    シャットダウンが必要な理由は、この記事からはメモリリークの解消だとは読み取れない。