史上最大の飛行機、再生産か ウクライナが検討開始 そこにある思惑

名が体を現す「ムリヤ」? その再生産指示が意味すること

 An-225でしか空輸できない大型貨物というものは、間違いなく存在します。しかしながらその需要は、An-225の供給を満たせるほど大きな市場ではありません。実のところ、例にあげた新幹線N700系程度ならば、原型機であるひとまわり小さいAn-124「ルスラン」でも十分に運ぶことができるのです。

 未完成のAn-225を就役させるには、300億円から500億円程度の費用が必要であると推定されます。この初期投資を回収し採算ベースに乗せる計画は、果てしなく厳しいものとなるでしょう。ましてウクライナは、隣国ロシアとの紛争を抱え内戦状態にあります。経済は疲弊し危機的な状況に陥っているなかにあって、再生産のための資金を調達することすら難しいはずです。

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貨物室は長さ43.35m、幅6.4m、高さ4.4mにも及ぶ。積み下ろし時には前脚を折り曲げ、機首を下げる(写真出典:hafizwira/123RF)。

 An-225の愛称「ムリヤ」は、ウクライナ語で「夢」を意味します。ひょっとしたらポロシェンコ大統領は、欝積した感情を募らせるウクライナ国民に対して、「世界最大の国産飛行機」という「夢」と「プライド」を与えたかったのかもしれません。

 はたして「ムリヤ」の再生産は単なるポピュリズムの道具として夢と消えるのか、はたまた現実のものになるのか、その動向に注目です。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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