谷底まで200mの橋、建設で最も怖いのは「住民」 開発と環境の両立、スイス流の答えとは

スイスで行われている道路橋の建設、そこで最も恐れられたのは「住民」の存在でした。背景にあるのは、「レファレンダム」に代表されるスイスの直接民主主義。「開発」と「環境」の両立という日本も抱えている課題、それに対する「スイス流の答え」が、この道路橋の建設に見えました。

国民が「国民投票」に持ち込み、覆せるスイス

 スイス最大の都市であるチューリヒから、南東へおよそ100km。山々を背景に草地や集落が広がる、いわば“スイスらしい田舎”のタミナ谷(ザンクト・ガレン州)で、2013年から架橋工事が始まりました。

 この「タミナ橋」は深さ200mの谷へ架けられる、アーチ橋としてスイス最長、ヨーロッパでも最長級という長さ475mの橋。プロジェクトマネジャーのジャン・ルイ・ナルドネさんは、両岸から中央へ延ばしていった橋のアーチがうまく合うかどうかを「技術的に難しかった点」として挙げるとともに、「一番怖いこと」を挙げました。「住民からのNO」です。

スイスのザンクト・ガレン州で建設されている「タミナ橋」(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 スイスは「直接民主主義」が特徴のひとつ。たとえば、国民が持つ権利「イニシアチブ(国民発議権)」により、18カ月以内に10万人の有効署名を集めれば連邦憲法の改正を提案できるほか、同じく国民の権利である「任意のレファレンダム(国民投票権)」では、連邦議会で採決された法律について、100日以内に5万人の有効な署名を集めると是非を問う国民投票にかけることができます。

 2016年6月、国民に無条件で一定額の現金を支給する制度「ベーシックインカム」についてスイスで国民投票が実施されましたが、これは導入推進派が有効な署名を集めたことから、行われたものです。ちなみに、国民投票では76.9%が反対。否決に終わっています。

 13世紀頃から、挙手による直接民主主義の制度「ランツ・ゲマインデ(青空議会)」が導入されていたスイス。以後、ずっとそうだったわけではありませんが、「直接民主主義」はスイスの大きな特徴で、現在、同国では橋などの土木事業も「住民からのNO」で進まなくなることがあるのです。

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