正恩氏「米は最大の主敵」=新政権発足控え核強化表明―交渉主導狙い対決強調

【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は5~7日の党大会の報告で、米国の政権交代に関し「誰が権力の座に就いても米国の対(北)朝鮮政策の本心は絶対に変わらない」と主張した。米国を「最大の主敵」と位置付け、20日に発足するバイデン新政権との対決姿勢を強く打ち出した。9日付の朝鮮中央通信が伝えた。
昨年11月の米大統領選以降、正恩氏が政権交代について見解を明らかにしたのは初めて。正恩氏は「新たな関係樹立のカギは米国が敵視政策を撤回することにある」と訴え、核戦力の強化にも言及した。威嚇的な言葉からは、米国を対話の場に引き出し、制裁解除に向け交渉の主導権を握りたいとの思惑もにじむ。
正恩氏は、党大会が開幕した5日から7日にかけ計9時間にわたり、党中央委員会の活動総括を報告し、「対外政治活動を最大の主敵である米国を制圧し、屈服させることに焦点を合わせるべきだ」と表明した。
さらに「超大型核弾頭の生産も持続的に推し進める」と強調。「1万5000キロの射程内の対象を打撃する命中率を向上させ、核先制・報復打撃能力を高度化する」と述べ、米本土を狙う核戦力の強化方針を示した。固体燃料を用いた大陸間弾道ミサイル(ICBM)、原子力潜水艦と「潜水艦発射型核戦略兵器」、軍事偵察衛星を開発・保有する考えも明らかにした。
米朝交渉の頓挫で制裁が長引く中、新型コロナウイルス感染の影響や自然災害も加わり、北朝鮮経済は苦境にあえぐ。正恩氏は報告でも「自然災害と世界的な保健危機の長期化も経済に深刻な障害を及ぼしている」と認めざるを得なかった。
局面打開には対米交渉を通じた制裁解除が不可欠だが、同盟関係の修復や内政問題を優先するバイデン新政権下で北朝鮮問題は後回しにされるとの見方は根強い。正恩氏が緊張を高める背景には、米国の注意を引き付ける狙いがありそうだ。
ただ、正恩氏は党大会で今後5年間の経済計画を「自力更生、自給自足」を掲げて推進する構えも示した。現実味の薄い総花的な軍備増強計画も、制裁の長期化を見据えてあえて発表した可能性がある。
◇正恩氏報告骨子
一、米国に敵視政策撤回要求
一、最大の主敵である米国制圧に焦点
一、核技術を高度化し、核兵器を小型・軽量化
一、南北関係の改善は不透明
【了】
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