スエズ貨物船、一部離礁=遮断1週間、通航再開急ぐ

【カイロ時事】エジプトのスエズ運河で世界最大級のコンテナ船「エバーギブン」(全長400メートル、幅59メートル)が座礁して立ち往生した事故で、スエズ運河庁は29日、船尾部分が岸から102メートル動き、運河中央部へ船の向きを80%修正できたと明らかにした。船体の一部を浮上させることに成功し、同日中に完全な離礁を目指す方針。23日から約1週間にわたり遮断が続いている運河の通航再開も急ぐ。
船を所有する正栄汽船(愛媛県今治市)も29日、船首が20メートル、船尾は50メートル動いたと発表した。スエズ運河庁によると、潮位が2メートルに達する29日の満潮時を狙い、運河の中央にえい航。ただ、救援作業に参加するオランダ海運大手の首脳は、地元メディアに「まだ難しい挑戦が残っており、喜ぶのは早い」と説明した。早期に離礁完了に至るかは不透明だ。
コンテナ船は船首が岸に接触し、土砂にめり込んで動けなくなっていた。当局や海難救助チームは、移動の妨げとなっていた大量の砂や泥を船首付近を中心に除去。巨大船舶に対応できる大型タグ船も投入して、復旧を試みていた。
航路がふさがれ、運河や周辺海域にはコンテナ船のほか、石油や液化天然ガスを運ぶタンカーなど既に約370隻が滞留。運河庁は「船が完全に浮上できれば運航を再開する」と強調したが、既に南アフリカの喜望峰への迂回(うかい)を強いられた船も多いとみられ、物流網の回復には時間を要しそうだ。ロイター通信によると、コンテナ海運世界最大手APモラー・マースク(デンマーク)は、船の待機解消に6日以上かかるとの見通しを示した。
スエズ運河の通航料はエジプトの主要な外貨収入源だが、通航中断による損失は1日当たり推計1400万ドル(約15億3000万円)に上る。エジプト政府当局者は地元メディアに、損壊した運河の工事費なども含め船主に賠償を請求する意向を示している。
【了】
コメント