戦車などはどのように身を隠すの? いまなお大事な「古典的」カモフラージュの技術
周囲に溶け込み敵に悟られないようにする光学的カモフラージュは、各種センサーが発達したいまとなっては古典的な技術といえるでしょう。ところが昨今の変わりゆく戦争のなかで、再び重要性が増すことになる…かもしれません。
いまなお実施される陸自の古典的カモフラージュ
「いつも空から見られていることを意識しています」――演習取材時に、陸上自衛隊のある機甲科幹部が話してくれたことです。そこは戦車部隊の宿営地、目の前では小型トラックが鋤(すき)のようなものを引きずってぐるぐる走り回っています。
最初は何をしているのか分かりませんでしたが、その鋤のようなものは整地用トンボを大きくした道具で、戦車が走った後の轍(わだち)を消す作業をしていたのでした。このトンボは部隊が工夫して作ったものといいます。各戦車にも小さなトンボが積まれており、乗員が手作業でこまめに轍を消す作業をしていました。
宿営地は木立の多い林に設定され、戦車や車両が駐車し、天幕も張られて、いわゆる「ミリキャン」といったところですが、それらのものは漫然と置かれているわけではなく、上空から見ても木立で隠れるよう絶妙に配置されていました。
戦車やトラックのような大型車が入れて、しかも木立で隠せるような場所を何台分も設定しなければならない宿営地のレイアウトはパズルの様です。駐車場所が決まれば乗員はすぐにトンボを持ち出して自車の轍を消し、植生やカモフラージュネットを被せる作業を行います。
戦車や車輌が移動する際も散らばって走らず、前車が通った跡をたどるようにしているといいます。上空から見れば、轍から車列の進行方向、台数などが分かってしまうからです。「いつも空から見られている」と意識して対空警戒することの重要性は、ロシアによるウクライナ侵攻の投稿動画を見るにつけ、ひしひしと実感します。
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