鉄道に乗らない「撮り鉄」の経済効果

撮り鉄を「客」にした鉄道会社

 筆者は1990年代、次のような状況に遭遇したことがあります。

 ある車庫へ蒸気機関車が入ることになり、その様子を撮影したいという鉄道ファンが多数いました。そこでその車庫では、住所氏名を記入し安全を守ってくれれば車庫に入って撮影してもいいよ、という体勢がとられます。筆者もお願いして入れてもらうことにして、住所氏名を記入していたとき、鉄道会社の方は言いました。

「弊社の路線で使えるプリペイドカードの限定版があるのですが、いかがですか?」

 また珍しい列車が走るため、山間の有名な撮影ポイントに大勢の撮り鉄が集結していたときのこと。そこへ鉄道会社の方が来て、言いました。

「皆さま、お疲れさまです。くれぐれも安全には気をつけてください。それと現在、限定プリペイドカードを販売しております」

 安全やテロ対策などに対する危機意識が昔と比べ高まった現在、そう簡単に車庫へ部外者を入れることはできませんし、鉄道会社の敷地外に集まっている撮り鉄に対し商売を行うことは、鉄道会社がそれを公認したなどと受け止められかねないせいか現在、こうしたことは耳にしません。そのためここでは、その鉄道会社名の明示を控えたことをご了承ください。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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3件のコメント

  1. 限定なんて言われたらつい買っちゃうよな。鉄道会社も同じやるなら普段は入れないような撮影ポイントに自由に入れる撮影限定チケットを発売してもいいのでは。(汽車に乗るためのチケットではなく、撮影ポイントの私有地に出入りできる撮影許可証という性格のもの)

  2. 空虚な幸せ

  3. 撮り鉄の経済効果と言うが昨今のトラブルを起こしまくっている姿があるとほんの一部はそうかもしれないけど総じて貢献しててもカメラメーカーとかに対してで鉄道会社か?と疑問は残る
    鉄分があるライターなら贔屓して見たとしても持ち上げるようなことを書くものではない