寝台特急衰退 上野駅名物「推進回送」も消滅の危機

「展望スイート」に乗務する運転士

 寝台特急では通常、こちらへ迫ってくるのは先頭に連結されている機関車の「顔」で、その後ろに連結されている客車の「顔」は遠ざかっていくばかりです。しかし推進運転では逆に客車の「顔」が遠くから迫ってくるため、なかなかに違和感があります。寝台特急の推進回送は尾久車両センター~上野駅間で実施されており、途中の鶯谷駅や日暮里駅などからその姿を楽しむことが可能です。

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上野駅へ推進回送される「カシオペア」。奥から手前側へ、客車を先頭に走っている(201412月、恵 知仁撮影)。

 列車の最後部には「最後部であること」を示すため、赤いテールランプ(後部標識)の表示が義務づけられています。しかしこの「カシオペア」の写真では、それがありません。つまり「カシオペア」の車両が機関車の後ろに連結され走っているのではなく、「カシオペア」の車両が先頭に立ち、後ろから機関車に押されている推進運転の状態であることがわかります。

 またこの推進運転を行っている「カシオペア」の写真では、営業運転時には最後尾の「展望スイート」となる部屋にJRの制服を着た人がいます。実はこの人は運転士で、信号など前方の状況を確認。最後尾の機関車に乗務してその操作を行っているもうひとりの運転士と連絡を取り合いながら、推進運転を行っています。

 ちなみに「カシオペア」の「展望スイート」にはこのように運転士が乗務することがあるため、部屋にベッドやシャワー、テレビなど乗客向けの設備ほか、推進運転時に運転士が操作するブレーキ装置も搭載されていたりします。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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