東洋初、ATSも初 「銀座線車両の技術変遷展」開催

銀座線が日本で初めて実用化したATS

 そして何よりも先進的だったのが、「打子式ATS」と呼ばれる「自動列車停止装置(ATS)」の採用です。この打子式ATSでは、列車に対し停止現示(一般的な赤信号)が出されているとき、線路脇に設置されたアームが立ち上がります。そこでもし列車が信号を無視して進むと、そのアームが車両側の装置にぶつかって自動的に非常ブレーキが作動する、という仕組みです。

 原始的なシステムではありますが、現在の銀座線が昭和2年の開業時に採用したこの打子式ATSが、少なくとも日本で初めての実用的なATS。つまり銀座線は日本で初めてATSを実用化し、列車運行の安全性向上を実現した路線なのです。

 浅草~上野間から始まった東京地下鉄道はその後、1934(昭和9)年に新橋駅まで開通し、新橋~渋谷間を開通させていた東京高速鉄道と1939(昭和14)年に直通運転を開始。浅草駅と渋谷駅を結ぶ現在の東京メトロ銀座線の形になります。そして両路線は戦時下の1941(昭和16)年、陸上交通事業調整法に基づき東京メトロの前身、帝都高速度交通営団へ統合されました。

 また東京メトロ銀座線の最新車両で2012(平成24)年4月に登場した1000系も、外観こそ開業当時をしのばせるレトロ調に仕上げられていますが、技術面では従来の車両より省電力のモーター(永久磁石同期電動機)や、騒音や振動を低減させる自己操舵機能付き台車の採用など、先進的な電車になっています。

 地下鉄博物館で開催される「銀座線車両の技術変遷展」は、こうした戦前から走る日本唯一の地下鉄「銀座線」の歴史を振り返られる貴重な機会です。

 【了】

Writer: 赤野 克利

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