最新方式だったアシアナ機着陸、なぜ事故に パイロット気象変化に対応できず?

4月14日の夜、広島空港で発生したアシアナ航空機の着陸失敗。同空港の滑走路は自動着陸も可能で、「なぜそれをしなかったのか」という見方もあります。しかしそれは正しくありません。実際に行われたのはそれよりもハイテクな方法でした。ではなぜ事故になったのでしょうか。ある「原則」が守られていなかった可能性があります。

自動着陸よりもハイテクだった着陸方法

 2015年4月14日(火)の夜に広島空港で発生したアシアナ航空162便(エアバスA320型機)の着陸失敗事故の真相は、15日から始まった事故調査により、事故当時の状況がだんだん分かってきました。ここでは、旅客機が広島空港に着陸するための方式を中心に、162便のパイロットが取った行動について解説します。

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事故を起こしたアシアナ航空A320型の同型機(2011年、大村基嘉撮影)。

 広島空港への着陸パターン(進入方式)は主に4つあります。

【1】ハイテク化されたコンピューター(飛行管理システム)により事前のプログラムに沿って着陸する「アールナブ・アプローチ」。「滑走路28」側、つまり滑走路の東側から着陸するときに使用。

【2】「計器着陸装置(ILS)」を使用した「ILSアプローチ」。「滑走路10」側、つまり滑走路の西側から着陸するときに使用。

【3】「VOR」と呼ばれる電波標識を使って計器を見ながら滑走路の直前まで飛行させる「VORアプローチ」。これは「滑走路10/28」の両方、つまり東西両方向からの着陸に対応する複数のパターンを設定。

【4】計器や管制からの誘導に頼らず、パイロットが目視で周辺の状況を確認しながら手動で着陸する「ビジュアル・アプローチ」。

 162便が使用した進入方式は、【1】の「アールナブ・アプローチ」です。事故当時の風向きは「北北西」、つまり西よりの風。それを考慮して向かい風になるよう東側から着陸する「滑走路28」を指示したのは広島空港の管制官で、その判断に間違いはなかったと考えられます。この「アールナブ・アプローチ」は、GPSを使った高精度な位置情報とコンピュータープログラムを用いる最新の進入方式で、現代の旅客機はこの方式で着陸できる性能を持っています。

 コクピットの画面には、アールナブによって飛行すべきコースが表示されるため、パイロットは画面の指示と実際に飛行している位置を確認しながら操縦していくことになります。最終着陸態勢に入るまでは「自動操縦」が可能。そして滑走路の延長線上(10~18km手前)からはパイロットが手動で操縦します。

【2】の「ILSアプローチ」は、パイロットが「手放し」で完全自動着陸に対応しますが、162便の進入時、西側から着陸する「滑走路10」を使うことは「追い風」状態になってしまいます。よってこの方式は着陸時のリスクを高めることになるため、適当とはいえません。

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