空中給油も編隊戦闘も可能に 最先端ドローン事情

100年前から実戦経験 ドローン最先端を行く軍用機のいま

 もともとドローンは軍用UAVを指す言葉として使われていました。第一次世界大戦(1914~18年)時にはすでに無線操縦型のドローンが実戦で使用されており、その歴史はすでに100年にも達します。

 ドローンによる主な作戦は、偵察、囮、体当たりによる自爆、ないし標的機などであり、長らくの間「使い捨てられる」という利点において活用されることがほとんどでした。近年では自律飛行能力の向上によって、様々な任務・着陸をこなせるようになり、有人機では難しい長時間の地上監視等にも用いられています。

 なかでもアメリカの高性能ドローン、ジェネラルアトミクス社製MQ-1「プレデター」は、40飛行時間の航続力、高性能レーダーや赤外線センサー、地球の裏側からでも運用を可能とする人工衛星を介した通信能力を持ちます。さらに対地・対空ミサイルも装備可能であり、2003年にはテロリストを暗殺し、史上初のドローンによる対地攻撃を成功させました。

 有人機並みの飛行性能と攻撃力を見込んだ大型ドローンの開発も世界中で行われており、これを「無人戦闘航空機(UCAV)」と呼びます。史上初のUCAVはジェネラルアトミクス社製「アヴェンジャー」となる見込みです。

 アヴェンジャーはジェットエンジンによって亜音速を発揮、2900kgまでの誘導爆弾・ミサイル類を搭載でき、ステルス性も有します。また1人のオペレーターが複数のドローンを制御する「スウォーム(鳥の大群の意)」が可能であり、それぞれのアヴェンジャーはネットワークで接続され、自律的に編隊で交戦します。

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自律空中給油に成功したノースロップ・グラマン社の「X-47B」(画像出典:Northrop Grumman Corp.)

 また、2015年4月17日にはノースロップ・グラマン社のUCAV、X-47Bが史上初めて自律空中給油を成功させました。X-47Bは2013年にも空母への自律着艦を成功させています。

 今後、有人戦闘機はUCAVのような高性能ドローンに徐々に置き換えられてゆくことになるでしょう。20~30年後には1機~2機の有人戦闘機に8~12機のドローン「ロボット・ウイングマン(僚機)」が付随し、ロボット・ウイングマンが前方に出てスウォームによる対地攻撃ないしドッグファイトさえこなすという研究も真剣に行われています。

 人気SFアニメ『マクロス』シリーズのゴーストや、『ガンダム』シリーズのファンネルのような兵器は、もはや実現の一歩手前にあります。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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