ユニークな東九州道の土地収用問題 その合理性は?

岡本氏の代替ルート、その合理性は?

 その代替ルートですが、合理性はあるのでしょうか。

 私、清水草一個人的には、「傾聴に値する面はあるものの、あえて変更するほどの合理性はない(なかった)」と考えます。

 なによりもまず、現在の予定ルートは、最短距離に近い直線を描いています。これが不可解な遠回りでいたずらに建設費を増大させているなら別ですが、不自然なルート取りでないことは確かです。

 岡本氏の「山すそルート」は、やや遠回りで、カーブも若干きつくなります。また、「建設費が半額になる」という根拠のかなりの部分が、「暫定2車線ではなく完成2車線とする(将来的な4車線への拡幅を想定せず、2車線確定で建設する)」「建設資材を安いものに変更する」という点に依っていて、ルート変更そのものによる建設費の低減は、到底半額まではいきません。なお、すでに完成している部分を放棄してまでルート変更するのは、いまとなっては論外です。

 暫定2車線高速の不合理性については、私も過去に主張していますが、東九州道のこの区間は地方路線としては将来性が高く、いずれ4車線化される可能性は低くないと考えています。

※暫定2車線高速の不合理性について
https://trafficnews.jp/post/42512/

 そのため、やはり岡本氏の「山すそルート」の出発点は、自分の土地を売りたくないというところにあると思わざるを得ず、公共性や合理性が高いとはいえません。

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みかん農園の尾根も、このような山を削った切り通し構造になる予定(2015年8月、清水草一撮影)。

 父から受け継いだみかん農園が高速道路で分断される無念は察するに余りありますが、これを「国家権力の横暴であり、中止すべきだ」と言うことはできないのではないでしょうか。我々国民が享受しているあらゆる公共サービスは、すべてある程度、国家権力の横暴(=私権の制限)によって実現していることを、思い起こす必要があります。

「日本国憲法」の第29条第3項には、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と記されています。

【了】

Writer: 清水草一(首都高研究家)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で、首都高研究家/交通ジャーナリストとして活動中。

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コメント

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2件のコメント

  1. 「公共のために私権が制限される」のは仕方ないとしても、「制限される」意思決定過程が公正でない方法で行われては、権利を「制限される」者にとってはたまりません。
    ところで「正当な補償」が事業前の価値に基づく一時金であって、公共事業によって発生した価値に基づく(通行料金等)による使用料にならないのはどうしてでしょう?

  2. みかん農家は公共性が無いとでも言いたい記事ですね。
    自動車好きには道路が大事かもしれないが
    みかん好きにはみかん農家大事である。