火災で揺らいだ新幹線、行先は 防犯カメラと運転台の連動も

「危機の芽」をどう摘むべきか

 ただ、起こってしまった新幹線初の火災。テロなどの心配もある時代、その安全性を担保するにはどうすれば良いのでしょうか。

 今回の火災事件では、車内へガソリンが持ち込まれました。JR各社のルールではそうした可燃物を3キロまで車内へ持ち込むことができますが、JR東海によると国鉄時代からの基準で、見直しに向けて国交省やJR他社と調整中といいます。

 ただそれで持ち込みが禁止されたとしても、手荷物検査をしない限り阻止できません。しかし定員1323人の列車が数分おきに発車し、1日におよそ42万人が利用する東海道新幹線。その数を検査するには多大な手間と時間を要し、「新幹線」の特長である利便性に大きく影響するため、JR東海の柘植社長はその実施に否定的な見解を示しました。

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全列車が16両編成で定員(座席数)1323人の東海道新幹線(2015年3月、恵 知仁撮影)。

 そうしたなかJR東海は事件以降、先述したN700A車両・客室内への防犯カメラ設置やそれらの連動、防煙マスクなどの搭載、駅や車内の放送における注意喚起、巡回の強化など行えることから順次、対策を進めているといいます。

 かつて駅のホームや車内に荷物が置かれていても、ただちに「不審物」としては扱われない時代がありました。しかし1995(平成7)年の「地下鉄サリン事件」などを経て近年、その“意識”は変わっています。

「危機の芽」を完全に排除することは簡単ではありませんが、こうした“意識の変化”でその芽を摘むことは可能でしょう。そう考えると鉄道会社はもとより、乗客を含めた社会全体でまずは行えることから行い、安全に対する意識を高めていくことがさしあたり現実的で、ある意味では容易な安全対策といえそうです。

 2015年に発生した「新幹線初の火災」はそうした意味で、「新幹線」の歴史のみならず、「日本の安全」にも大きな影響を与える出来事かもしれません。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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1件のコメント

  1. 新幹線が安全だったのは、過去の事。今まで単に運が良かっただけ。既に車両絡みで3名死亡してるんですから。
    理由を付けて死亡事故無しと偽っていただけ。
    又、在来線と軌間が別だった事が幸いして事故が起こりにくいだけで、新幹線が安全なシステムとは言えない。
    なんといっても、逆走が出来ないため、一度トラブルと軌道上に数珠つなぎで閉じ込められるという欠陥がありますから。