バス車内でラジオ放送なぜ? 背景に厳しい沿線環境

別の役割も担うようになったバス車内のラジオ

 しかしながら、一般的にバス車内は案内放送を除いて静かなもの、また静かにするものです。苦情はないのでしょうか。

「把握している限りでは、過去に1度だけ北海道外から来られたお客様より『運転手が暇つぶしにラジオを聞いている』と苦情が寄せられたことがありましたが、その際は経緯や地域事情をお話してご理解いただきました」(沿岸バス、斉藤さん)

 また近年では、障害情報の収集以外にもラジオ放送が役立っているといいます。

「元々は、障害情報を収集する目的でラジオ放送を流していましたが、過疎化による病院や学校の統廃合などによって通院・通学に1時間以上かけるお客さまが増えたこともあり、最近では乗車中の娯楽としても支持されています」(沿岸バス、斉藤さん)

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「萌えっ子キャラクター」でも知られる沿岸バス。車内モニターにも(須田浩司撮影)。

 ちなみに、流している放送局はHBC(北海道放送)、STVラジオ、NHKのいずれかで、チャンネルの選択は乗務員の裁量に任されているそうです。なかでも野球中継や相撲中継、STVラジオの長寿番組「ウィークエンドバラエティ 日高晤郎ショー」が人気といいます。

 実は、かつては長距離路線を中心に、車内でラジオ放送を流していたバス会社が少なからず存在していました。なかには十勝バス(北海道帯広市)の「広尾線代替バス」のようにTV放送を流していた路線もありましたが、時代と共に数が減り、いまではすっかり珍しくなっています。

 東日本大震災以降、娯楽としてのみならず、災害時の情報ツールとして再評価もされているラジオ。スマートフォンが普及する昨今ではありますが、路線バスにおける情報ツールとして、より注目されて良いかもしれません。

【了】

Writer: 須田浩司

自称「高速バスアドバイザー」。運行管理者資格所有。高速バス乗車1100回以上。 紙原稿・ネット原稿・同人誌・ブログなどを通じてバス・鉄道を中心とした 「乗りもの旅」の素晴らしさを伝える活動を行う。北海道在住。

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コメント

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1件のコメント

  1. 素っ頓狂なクレームに毅然と説明した会社の方針が素晴らしい( ̄^ ̄)ゞ