まとまらぬ欧州、よみがえる戦闘機「ユーロファイター」の悪夢 英EU離脱、安全保障の影響は

戦闘機の名前でもまとまりを欠いた欧州 その将来の安全保障はどうなる?

 1991(平成3)年、前述のように「EFA」計画の代案として「ニュー・EFA」の開発計画が立案されますが、イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン各国ともにこれ以上、次世代戦闘機開発の遅れは容認できなかったことから同案を退け、結局、イギリスが単独で開発した「EAP」を母体とすることが正式に決定されます。こうしてその4か国による、2000(平成12)年の就役を見込む「ユーロファイター2000」計画はようやく開発がはじまり、1994(平成6)年に試作機が初飛行します。

 同計画はそこからさらに9年の開発期間を要し、2003(平成15)年に当初の計画から24年の歳月を経てようやく実用化へ至ったのですが、この開発期間中にも今度は「名前」を巡って紛糾しています。

 1998(平成10)年、ここまでに最も多く開発費を捻出したイギリスによって同計画の機体愛称は「タイフーン」と命名されますが、これは第二次世界大戦当時、イギリス空軍が擁した傑作戦闘爆撃機の名を継いだものであり、当時、イギリスの敵国であったドイツが難色を示したのです。そのため現在、イギリスは「タイフーン」、イタリアは「F-2000 タイフーン」、ドイツとスペインは「ユーロファイター EF2000」という異なった制式名称で呼称しています。

 戦闘機の開発は数兆円という1国では負担しがたい規模になっており、今後は国際共同事業が主流になるとみられます。昨今、ロシアのウクライナへ対する露骨な武力行使やクリミアの占領によって、西ヨーロッパ諸国はNATOによって強固に結束しつつありますが、軍事と経済、そして政治は決して切り離して考えられるものではなく、イギリスの「EU離脱」という選択が、軍事面へ影響を与えないとは言い切れません。

 冒頭で述べたとおり、今回のイギリスの決断がただちに安全保障面へ影響するとは考えづらいですが、それが巡り巡って将来の「ユーロファイター」性能向上計画、ひいてはイギリスと各国との軍事関係にどう影響を与えていくか、今後の展開を不明瞭にする新たな要素になったのは確かでしょう。

【了】

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Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

1件のコメント

  1. EU(ドイツ・イタリア・スペイン)と離脱後のイギリスの間の輸出入に関税が掛かるとなった場合、機体生産コストに響かないのかな? 各国でユニット毎の生産してますよね? 将来の性能向上計画以前の問題かと。