標高2000m近い空中を 世界初「オープンロープウエー」なぜ誕生? 背景にスイスらしさ

なぜ2階をオープンデッキに? 観光客の視点だけでは分からない背景

 このような“変わったロープウエー”が誕生した背景には、スイスらしい理由がありました。

 19世紀以降、鉄道網が広がっていくにつれ、スイスではその山を楽しみたい外国人が多く訪れるようになり観光業が発展。そこで「山の乗りもの」も発展しました。「カブリオ」が運行されているシュタンザーホルンも、19世紀末にケーブルカーが開業しています。

「氷河急行」や、3454mとヨーロッパ最高所の駅を持つユングフラウ鉄道など、多くの「山の乗りもの」がいまなお魅力のひとつであるスイスの観光。そうしたなか、より山を楽しむべくオープンデッキの「カブリオ」が登場したことは、「スイスらしい」といえるでしょう。

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「カブリオ」では、スイスの楽器「アルプホルン」による見送りも(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 ただ、「スイスらしい」のはそれだけではありません。「カブリオ」のマーチン グートさんは次のように話します。

「シュタンザーホルンの近くには、世界一の急勾配で知られるピラトゥス山の登山鉄道、一年中雪があり回転しながら登るティトリス山のロープウエーという、強力なライバルがいます。そこでよりアクティブなものを造ろうと考えました」

 スイス観光における魅力のひとつであり、旅行者にとっては、どれに乗ろうか選ぶのがまた楽しい「山の乗りもの」。視点を変えると「競争」があり、そこで「カブリオ」が登場したわけです。これもまた、多くの「山の乗りもの」があるスイスらしい理由といえます。「カブリオ」が運行されている区間には元々、一般的なロープウェーがありましたが、これにより観光客が2割から3割、増加したそうです。

「カブリオ」はスイスデザイン賞にノミネートされ、在日スイス大使館の栃林直子広報官は「スイスはイノベーションを常に探しており、その象徴でもあります」と話します。

 同国の魅力、歴史、地理に深い縁がある「山の乗りもの」で、“世界初”のオープンデッキを実現した「カブリオ」。単に物珍しいだけでなく、とても「スイスらしい乗りもの」といえるかもしれません。

●取材協力:在日スイス大使館

【了】

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コメント

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1件のコメント

  1. 標高じゃなくてさ、地面から何mなのさ