谷底まで200mの橋、建設で最も怖いのは「住民」 開発と環境の両立、スイス流の答えとは

「住民からのNO」を避けるため、行われたこと

「タミナ橋」建設にあたって、どう「住民からのNO」を避けたのか、プロジェクトマネジャーのナルドネさんは「最初から自然保護団体と関係を作って、計画を進めていきました」と話します。

 スイスでは工事で森を切り開くなどした場合、法律で同じ面積を緑化(自然化)する義務があります。「タミナ橋」の工事では、その開通で不要になる旧道を自然に戻すとのこと。ただ、すぐにアスファルトをはがすとコストを要するうえ、エネルギーも消費するため、しばらく旧道を遊歩道として使ったのち、アスファルトが劣化した時点で工事が行われる予定です。

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「タミナ橋」のプロジェクトマネジャー、ジャン・ルイ・ナルドネさん(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 ただそれでも、工事に反対する人はいたといいます。理由は建設費で、それを出すのは州政府。「タミナ橋」は周辺住民が多くないため、特にほかの地域から反対が出たのです。

「タミナ橋」の建設理由は、この地域が地滑り地帯で対策費が毎年、地元自治体の大きな負担になっていたこと、崩落で道路が不通になると、通学や、地域にあるスイスの有名リハビリ施設に影響が出ることから、それを解決しようというものです。

「リハビリ施設の移転には2億スイスフラン(約216億円)が必要ですが、橋は関連道路などを含めて5600万(約60.5億円)と最も低コストです。そして橋は100年持ちます」(「タミナ橋」プロジェクトマネジャー、ナルドネさん)

 そうした情報公開などの結果、投票にかけられるほど、「タミナ橋反対」の署名は集まりませんでした。スイスでは、いつのまにか道路ができているようなことは無いといいます。

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