信頼されて半世紀 空自現役パイロットに聞く輸送ヘリ「チヌーク」の実像

モットー「定時・定点・必達」を遂行するために

「本土にお住まいの皆さんは、雲というのは大抵の場合、西から東へ流れることをご存知と思いますが、天気もだいたいそのように推移するので、現在地から西の天気を知ることで今後の天気を予測しやすいです。ところが、ここ沖縄は周りが全部海ですから、洋上から突然雲が湧くなど天気がめまぐるしく変化するうえに、地上の観測所も少ないですから、予測が非常に難しいのです。前線帯を通過しようとしたら、すでに“雨の壁”になっていたりします。直行経路で行けない場合は、減速し、高度を法律で定められた最低安全高度付近まで降下させたり、雨と雲の壁を迂回するよう経路を変更したりといったことがあるので、こちらでは1時間後2時間後、長いときには半日後の気象状況を常に考えなければ飛べません」(那覇ヘリコプター空輸隊 今井3佐(当時))

 沖縄のめまぐるしく変わる天候は、空を飛ぶ「チヌーク」にとって大敵です。しかし「ロングレンジ・チヌーク」には、従来機になかった“秘密兵器”が装備されました。

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米・ハネウェル社製のウェザーレーダー(円形のアンテナ)。民間機にも広く使われている。

「機首部のFRP(繊維強化プラスチック)製カバーの内部には、ウェザー(気象)レーダーが搭載されています。パイロットはこのウェザーレーダーによって、自分たちがこれから飛んでいこうとする先々の気象状況を、コックピット内のディスプレイに表示し、掌握することができます。特にレーダーサイトへ精密機器などを輸送する際は、乱気流などが予想される荒天域を回避すべきなので、ウェザーレーダーで先々の天候を確認し、早めに迂回を決断することができます。結果として、到着予定時間から大幅に遅れさせないフライトができます。我々のモットーに『定時・定点・必達』という言葉があり、つまり決まった時間に決まった場所へ必ず届けるという意味ですが、ウェザーレーダーはこれに必要不可欠です」(那覇ヘリコプター空輸隊 今井3佐(当時))

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