環境規制を「順風」に? すすむ船のLNG燃料化 横浜港から始まる次代の「世界戦略」

山積する課題、それを克服する国家戦略と”実績”

 ここまでフェイズを区切る理由は、需給のバランスを見据えたうえで、これを事業として成立させる採算性を確保するためです。この「事業として成立させる」という点は大きな課題ですが、ほかにも、自然気化したガスの取り扱いや、バンカリングの供給用ホースに関する「船舶安全法」や「高圧ガス保安法」といった法令の整備、供給施設の国際規格に関する検討など、あらゆる方面に課題は山積しています。

 なかでも、LNG供給価格の安定化は最大の課題かもしれません。その世界的需要は年々増えつつあり、供給が拡大する見込みはあるものの、もし重油より高価になってしまうとLNG燃料船の普及は停滞しかねず、そうなればインフラ整備も進まなくなりかねないでしょう。

日本は世界最大のLNG輸入国であり、同時に、世界最大のLNG運搬船隊を保有、運用している(写真出典:photolibrary、写真はイメージ)。

 この点について経済産業省は、2020年代前半までに日本をLNGの取引や価格形成の拠点(ハブ)とし、低廉かつ安定的なLNGの調達につなげていくことを目指す「LNG市場戦略」を2016年5月に発表しています。

 実は日本は、世界最大のLNG輸入国です。前出の国土交通省 港湾物流戦略室の松良精三室長も「世界LNG総輸入量の約4割を占め、すでに港湾に隣接して多数のLNG基地が立地しています」と、既存インフラの充実にふれつつ、輸入大国であることが「LNGの国際調達において、スケールメリットを活かすことで調達価格の低減が可能になることから、大きなアドバンテージになると思われます」といいます。経済産業省の「LNG市場戦略」も、決して夢物語ではないのです。

「(日本は)多数のLNG運搬船隊を運航し、小型船へのLNGバンカリングのノウハウも蓄積されています。アジアにおいては、LNGのバンカリング拠点がまだ形成されておらず、各国ともその形成を目指して様々な取り組みを進めているところです。(前述のような)日本が持っているポテンシャルを最大限発揮して、世界におけるLNGバンカリング拠点を日本に形成していきたいと考えています」(松良室長)

 船舶のLNG燃料化に出遅れた感はあるものの、逆転し、むしろインフラ面では世界をリードするという目がなくはないこの数年間が、日本における海運関連産業の今後を占う正念場かもしれません。

【了】

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