操船の自動化、研究の最前線とは? 日本郵船ほか5社、最新研究の一部を公開

クルマにおいて昨今、進展の著しい自動運転技術ですが、船における操船の自動化は現状、どのような段階にあるのでしょうか。その最新研究の一部が公開されました。

衝突回避は至上課題

 船の操船の自動化は、どこまで進んでいるのでしょうか。

 国土交通省が進める8つの「先進船舶技術研究開発支援事業」のひとつで、日本郵船ほか5社が取り組む「船舶の衝突リスク判断と自律操船に関する研究」について2017年12月26日(火)、その研究の一部が公開されました。

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日本海洋科学のシミュレーターで操船指示を出す、日本郵船航海チームチーム長で船長でもある田口稔さん(写真中央)(2017年12月26日、乗りものニュース編集部撮影)。

 外航船(外洋をわたる船)における操船の自動化は2017年12月現在、ECDIS(電子海図情報表示装置)上に設定したコースを自動で航行できるところまでは可能になっています。これはクルマにたとえるなら、ちょうど「レーンキープアシスト」にあたります。また、レーダーやAIS(自動船舶識別装置)などで他船の位置を把握し、そこからどのように動くかという動向予測も可能ですが、一方で他船を自動で回避するようなことはまだ実現できていません。海上は、ある程度どんなふうにも船を走らせることが可能で、陸上(路上)より無秩序である点も実現が難しい理由のひとつだといいます。

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写真左から、日本海洋科学 桑原悟プロジェクトマネージャー(日本郵船より出向)、国土交通省 海事局 海洋・環境政策課 田村顕洋技術企画室長、日本海事協会 松本俊之技術研究所長、古野電気 舶用機器事業部 営業企画部 近藤基治企画担当部長、東京計器 舶用機器システムカンパニー 舶用技術部 箱山忠重担当課長、日本無線 マリンシステム事業部 マリンエンジニアリング部 井上眞太郎舶用ネットワークグループ長、日本郵船 海務グループ 航海チームチーム長 田口稔船長(2017年12月26日、乗りものニュース編集部撮影)。

 そうしたなか、日本郵船、MTI(東京都千代田区)、日本海洋科学(神奈川県川崎市)、古野電気(兵庫県西宮市)、日本無線(東京都中野区)、東京計器(東京都大田区)の6社は、船舶運航の安全と、乗組員の負荷軽減、およびリソース(乗組員)不足の解消を目的とし、現在「コンピューター映像を利用した公開支援ツールの研究開発」「船舶の衝突リスク判断を容易にする技術」「陸上からの遠隔操船」という3つの柱で研究を進めています。これはそのまま、自律操船に必要な「認知」「予測判断」「操作」という3つの要素の根幹をなすものです。

 日本海洋科学にてこの日公開されたのは、上記の柱のふたつ目、船舶の衝突リスク判断に関する研究課程です。同社の大型操船シミュレーターを用い、大型商船の操船経験を積んだ船長がどのように他船の接近を危険として予測し衝突回避の判断を行うか、という過程をデータ化、集積するというプロセスです。そうして集積したいわばビッグデータから、危険と判断する「基準」を策定し、たとえば他船が接近したときに、それがどの程度危険かをランク付けできるようになるといいます。

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コメント

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1件のコメント

  1. 陸とは違って潮とか波とか風とかの向きとか強さとかで簡単に針路が変わるし、海に明確な道があるわけでもない。実用化は相当厳しい。それでも他船からの緊急回避が可能なら、30年前のフィリピンの沿岸客船ドニア・パス(約2600総トン、本来の定員約1500名、但し実際乗船4200名以上、乗船名簿未整備のため実数不明)と、小型ガソリンタンカーヴェクター(約700総トン、26名乗り組み、1000tガソリン満載)との衝突炎上事故(生存者ドニア・パス側22名、ヴェクター側2名。死者、行方不明者双方合計最低でも4200名以上、実数不明)のような衝突事故は減るだろう。