米陸軍、装甲車に防空能力付与のナゼ 注目集める「短距離防空」とストライカー装甲車

米陸軍は近年、防空能力の強化を進めていて、そうしたなかでもストライカー装輪装甲車への防空能力付与が注目を集めています。なぜ米陸軍は防空能力強化を進め、そしてなぜストライカー装甲車が選ばれたのでしょうか。

背景に戦争の変質

 2018年5月現在、アメリカ陸軍は、防空能力のなかでも特に短距離防空(SHORAD:Short Range Air Defense)能力の向上に力を入れています。「短距離防空能力」とは、ヘリコプターや無人機そのほかの航空機など、低空を飛行する目標から地上部隊を護るための能力のことで、使用される兵器の射程も数kmから10km程度です。ハリウッド映画などにも登場する携帯式地対空ミサイルFIM-92「スティンガー」も、この短距離防空能力を支える兵器のひとつです。

Large 180516 stryker 01
短距離防空能力の要になるか、ストライカーMSLのデモンストレーションの様子(画像:ジェネラルダイナミクスランドシステムズ)。

 ではなぜアメリカ陸軍は、この短距離防空能力を向上させようとしているのでしょうか。それは、アメリカが直面する軍事的脅威の推移が関係しています。

 2001(平成13)年におきた9.11アメリカ同時多発テロ以来、アメリカはアフガニスタン、イラクを中心に対テロ戦争を戦ってきました。この長きにわたる対テロ戦争において、アメリカ陸軍は強力な装甲車両や航空機を持たないテロリストとの戦いに対応していくあまり、それまで整備していた短距離防空能力の維持をおろそかにしていきました。

 しかし、2014年以降状況は一変します。ヨーロッパで存在感を強めてきたロシアがウクライナにおいて軍事力を行使したのです。こうしたロシアからの軍事的脅威に直面したアメリカ陸軍は、従来の対テロ戦争に対応する態勢から、冷戦時代のような国家間戦争に対応する態勢への移行を迫られたのです。

 特にロシアが保有する攻撃ヘリや無人機の脅威をいかに取り除くかという問題は重要であり、そこでアメリカ陸軍は対テロ戦争で失われた短距離防空能力の向上を急速に進め始めたのです。

この記事の画像をもっと見る(4枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

2件のコメント

  1. ちょっと記事の認識が違います。
    短距離防空とアベンジャーシステムのスティンガーは近距離防空でその辺をごっちゃにしています。
    この車輌は短距離防空ではあるもののどちらかというとADATSの系統になります。
    そういう意味では昔のFAADS(Forward Area Air-Defense System:前線戦域防空システム)計画のLOS-F-H(Line-of-Sight Forward-Heavy)にあたり当時M2ブラッドレーの改造型が採用されたものの導入が出来ませんでした。
    ちなみにM6 ラインバッカーがM2ブラッドレーのATMをスティンガーにして導入しましたが、いったん廃止されましたがまた現役に戻すと言っているみたいです。

  2. アメリカ内地をロシアに空爆される可能性は考慮して無いのね