結石治療と対戦車兵器の数奇な関係 航空機メーカーの失敗がもたらした大きな恩恵とは

名の知れた企業が、出自は別業界というのは珍しくありませんが、航空機メーカーが兵器開発に失敗し、そこから医療機器で名を馳せるのはレアケースかもしれません。独ドルニエ社のたどった失敗と成功のお話。

突然ですが、尿路結石のお話です

 誰でも痛いのはイヤですよね。人間が経験する痛みのなかでも、上位になるとされる尿路結石は、生涯罹患率が男性15.1%、女性が6.8%と、珍しくない病気のひとつです。そして、わりと最近になるまで、開腹をともなう手術がその治療法とされてきました。

 患者に負担が大きい開腹手術以外に方法はないかと、世界中で治療法の開発が行われ、旧ソ連では体内に直流電流を流して火花で破壊する方式が考案され、日本では微量の爆薬を体内で爆発させる方法も考案されるなど、結石を破壊するための様々な試みがされていました。

 しかし、近年は「ESWL(体外衝撃波結石破砕)」の普及によって、手術をせずに日帰りでの治療も可能になりました。これは、体外から衝撃波を結石に集中させることで結石のみを破砕する技術で、確実性が高い上、従来と比べ身体への負担が大幅に減らせることから、いまや尿路結石に対する標準的な治療法になっています。

「乗りものニュース」の配信記事で、なぜ結石治療の話なのでしょうか。実はこの技術、歴史的に重要な航空機メーカーの、兵器研究が元になっているのです。

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かつて航空機メーカーとして名を馳せたドルニエ社の、完成当時、世界最大を誇った飛行艇「ドルニエDo X」(画像:アメリカ海軍)。

世界と日本の航空機に影響を与えたドルニエ社

 1914(大正3)年にクラウディウス・ドルニエが設立したドルニエ航空機製造(ドルニエ社・ドイツ)は、航空機への軽金属使用や、飛行艇の開発で歴史に大きな名を残したメーカーです。特に有名なのは、1929(昭和4)年の完成当時、世界最大の航空機だった12発飛行艇の「ドルニエDo X」です。大西洋横断飛行を目指して作られた大型航空機で、世界に大きなインパクトを与えましたが、大恐慌の影響もあり3機の製造に留まりました。

 また、ドルニエ社は日本の航空産業にも大きな影響を与えています。第二次世界大戦前にドルニエ社は、川崎造船所(現在の川崎重工業)と技術提携し、リヒャルト・フォークト博士を日本に派遣します。フォークト博士は川崎造船所で航空機の設計に携わると共に、日本人設計者の育成も行い、そのなかには後に三式戦闘機「飛燕」や、YS-11の設計に携わる土居武夫もいました。

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コメント

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1件のコメント

  1. 全然知りませんでしたが、とても良い話ですね。

    もっと日本で知られて広まるべきでしょう。