「降りる人が先」って誰に教わったんだろう 鉄道ラッシュを支える「訓練された乗客」はどう作られてきたのか

鉄道の朝ラッシュ輸送は、通勤客の整然とした動きで支えられています。「整列乗車」「降りる人が先」といった“通勤しぐさ”は、いつ頃に生まれ、どのように共有されてきたのでしょうか。

過密ダイヤを支える客の乗降マナー

 いきなりですが、ちょっと頭の体操をしてみましょう。どこかの路線の朝ラッシュのある駅で、駆け込み乗車があり、何度かドアを閉め直したことで列車の発車が5秒遅れました。次の駅でも、その次の駅でも駆け込み乗車があり5秒遅れました。

 終点までの20駅で計100秒、つまり1分40秒遅れることになります。さらに列車の到着が遅れたためにホームが余計に混雑して、10駅目以降は乗降時間がそれぞれ5秒、計50秒増えてしまいました。これで合わせて2分30秒の遅れです。

 この路線は朝ラッシュピーク1時間の運行本数が24本で、運転間隔は2分30秒ですが、積み重なった遅れのせいで列車1本分の運転ができなくなってしまいました。輸送力にして4%の減少です。実際にはさらに次、その次へと遅れが波及していくので、影響はもっと大きくなります。

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混み合う通勤電車のイメージ(画像:写真AC)。

 このように身勝手な乗客がひとり出るだけで朝ラッシュ輸送は成り立たなくなってしまいます。言い換えれば乗客の「乗降マナー」が過密ダイヤを支えているのです。

 しかしこのマナーは、誰かに教えられたものではないでしょう。マナーポスターで取り上げられることもありますが、見ていない人の方が多いはず。私たちは周りの乗客の動きを見て、人波にもまれながら、訓練された乗客へと育っていくのです。

 このような「通勤しぐさ」はいつ頃に生まれ、どのように共有されていったのでしょうか。

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