塗装だけ?「ブルーインパルス専用機」ノーマルT-4との違い アクロバット飛行支える工夫

ノーマル機より広いラダーの可動範囲

 加えて垂直尾翼の方向舵(ラダー)は、ノーマルのT-4の場合、速度が240ノット(約444.5km/h)以上だと安全対策の面からリミッターが作動し、可動範囲が5度に限られるようになっていますが、ブルーインパルス用の機体はこの制限がなく、10度まで範囲を拡大できます。またリミッターを解除すれば最大15度まで広げることも可能だとか。これはアクロバット飛行時の機動性を高めるための措置で、この解除用ボタンも操縦桿にあるといいます。

 ほかにも、風防内側上部に取り付けられたバックミラーは、ノーマルのT-4では中央に1枚のみですが、ブルーインパルス用の機体はさらに左右に1枚ずつ追加し、合計3枚とすることで後方の視認範囲を広げています。

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ブルーインパルス仕様のT-4の機首アップ。バードストライク対策として風防前部が強化されており、内側のヘッドアップディスプレイの素材もガラスからアクリルに変更されている(画像:航空自衛隊)。

 これらの改修を受けた機体は「戦技研究仕様機」と呼ばれるそう。なお当初は新造でブルーインパルス向けの専用機として11機が製作されましたが、それらは2019年度末までに全機が退役しており、現在使われている機体は従来、ノーマルのT-4として用いられていた機体に所要の改修を施した、いわば中途改造機です。

 東京パラリンピック開会日の展示飛行は、シンボルマークは描かず、スモークを引きつつの航過飛行のみです。とはいえ、一見しただけではわかりにくい特別な改修が、そのスモークをきれいに引くために、また安全な飛行を行うために、重要な意味を持っているといえるでしょう。

【了】

【見たことある?】スモークオイルの補充の仕方

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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