「取舵一杯」…って速度の話なの!? 「第一戦速!」って何キロですか!? 独特すぎる海上自衛隊の“速力”表現

最高速の場合は「一杯」!

 こうして見てみると、最大戦速が最も速いような印象を受けますが、これは常用でのハナシ。実際の最高速は緊急時に用いられる、機関の最大出力を発揮させる「一杯」という表現があります。

 しかしながら、最大出力は連続させると機関の破損につながるので短時間の使用に限られ、速力も風や海流などの諸条件に左右されるので、具体的に何ノットと表現するのは困難。また最大戦速でも機関に無理を強いることになるため、最大の速力は第五戦速にあたる30ノット前後と公式では発表されているのです。

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護衛艦「はるさめ」の艦橋ウイング部に設置された速力指示器。12ノットの「原速」を表示(咲村珠樹撮影)。

 護衛艦の場合は戦闘艦艇のため「戦速」という表現が用いられていますが、一般的には南極観測船として知られる砕氷艦「しらせ」など、戦闘艦艇ではない場合は言い方が少々異なります。「原速(12ノット)」以下では同じですが、高速側は「第一強速(15ノット)」といった感じで、戦闘時を表す「戦」ではなく「強」の表記が用いられます。

 アメリカなどとの共同訓練でも用いられる、艦艇の速力表現。統率の取れた艦隊行動を実現するためには、非常に重要な役割を担っているといえるでしょう。

【了】

【海自史上最速の艦艇はコレ!】イージス艦「こんごう」のエンジン制御盤ほか(写真)

Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)

ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。

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