「臨海地下鉄」を「りんかい線」が運営するのが“最適”と言える理由 地下鉄建設「2種類の補助金」から見える将来ネットワーク

「地下鉄補助」か「利便増進」 選択条件は新路線の「性質の違い」?

 臨海地下鉄が取り得るスキームは主に、都が要望する鉄道・運輸機構と東京臨海高速鉄道の上下分離(利便増進)、都営地下鉄または東京臨海高速鉄道の上下一体(地下鉄補助)です。

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りんかい線に「2路線目」が誕生する?(乗りものニュース編集部撮影)。

 補助率ではよく似た2つの制度ですが、国土交通省都市鉄道政策課は、どちらが有利かで選択するものではなく、「制度そのものの性質が異なる」と説明します。

 地下鉄補助は「需要が大きく単体として事業が成り立つ路線」が対象、利便増進の対象は路線単体では採算性が低く、「速達性向上のために既存の路線間を短絡する連絡線」となります。

 臨海地下鉄は一定の収支採算性はあるものの、概算事業費は約4200~5100億円と見込まれており、人件費・物価高騰でさらに膨らむ可能性があります。臨海エリアの再開発が進展すれば利用者は増えるでしょうが、予定通りに進むかは分かりません。

 都営地下鉄による上下一体整備も不可能ではありませんが、巨額の資金を自己調達するリスクがあるため、利便増進のスキームで進めたいということなのでしょう。同様に東京臨海高速鉄道の上下一体整備も営業収入に対して事業費が巨額すぎて現実的ではありません。

 利便増進を採用する場合、どの事業者でも営業主体になれるのでしょうか。国交省によれば、法律上明記されていないものの、新横浜線や採択を目指している「蒲蒲線」のように、既存路線から直通運転する短絡線の整備を前提としているので、営業主体は新線と接続する事業者になります。

 都営地下鉄も営業主体にはなれません。一応、経由地として示されている日本橋駅(東京駅)や勝どき駅からの短絡と考えることはできますが、直通運転は想定されません。また公営鉄道は地域住民に必要な輸送サービスを提供する性質上「上下一体の整備が前提」であり、公営地下鉄が営業主体となる利便増進事業は想定外とのことです。

 そうなると臨海地下鉄の営業主体となり得るのは必然的に、東京延伸した場合の「つくばエクスプレス」と「りんかい線」になります。当初構想から言えばTX東京延伸とあわせて整備するのがベストで、車庫の共用も期待されていましたが、都の出資比率は17.6%に過ぎず、事業着手の目途は立っていません。

 臨海地下鉄は現時点で東京~有明・東京ビッグサイト間の想定ですが、「羽田空港への接続を今後検討」との構想が存在します。線路が接続されれば利便増進の要件を満たすとともに、りんかい線との車庫の共有も可能です。そうなれば臨海エリアの交通ネットワークを一元的に運営するという意味で、「ほぼ都営」の東京臨海高速鉄道が利便増進スキームを採用するのが最適と言えそうです。

【画像】えっ…!これが「臨海地下鉄」のルートです

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