現存唯一の最強戦闘機「疾風」“ウワサ話”はガセだった! 文化財としての状態調査に密着 “新発見”も続々!?

保存の取り組みから文化財指定へ

 今回で8回目を迎えた「疾風」の状態調査では、すでに見つかっていた尾脚の作動を行う油圧配管の亀裂による漏れに対処するため、操縦席を外してその下にある配管根元に栓をする処置を施しています。そして作動オイルを注入して、その後の漏れのチェックや各所の油圧作動も確認しました。

 また、エンジン架内のロッドの取り付け間違いを修正して、始動用の慣性始動機(エナーシャ)を暖めて内部のオイルを溶かし、ハンドルを回して内部状態の確認も行っています。

 ほかにも、保存処置を施したバッテリーが胴体内に積み直されました。さらに失われたと思われていた操縦桿の左側にあった無線機用のボタン部分も、今回の調査中に機内から発見されています。

 ちなみに、こうした毎年の調査に掛かる費用は、その多くが南九州市の予算から捻出されています。すなわち、世界で唯一残る貴重な「疾風」の保存に地元の行政としても取り組んでいるのです。

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計器の半分程は飛行のためアメリカ製に替えられていたが、その他はオリジナルを保っていた。また操縦桿には新たに発見された無線機用のボタン部分が仮付けされている(吉川和篤撮影)。

 このような長期に及ぶ活動が実を結び、「疾風」は2020年11月には南九州指定文化財(有形文化財/歴史資料)に指定され、2023年2月には日本航空協会より重要航空遺産に認定されています。これは第2次世界大戦中の国産軍用機としては、異例の扱いといえそうです。

 また南九州市の取り組みは「疾風」の保存だけではありません。知覧やその周辺に残る戦時中の弾薬庫や給水塔といった施設に加え、掩体壕やトーチカなどの戦争遺構についても保全や管理をして、その歴史を残し、平和の尊さを後世へ伝えようと動いています。

 こうした地元の活動は、きわめて意義のあることだと筆者は捉えています。また、この南九州市の取り組みは、全国に残る戦争遺構の保全のあり方のモデルケースにもなるのではないでしょうか。

 さまざまな人が南九州市の知覧町を訪ねて、現地で実在する遺構に触れてみると良いと考えます。自国の歴史を振り返るという意味で、きっと新たな発見があることでしょう。

【了】

【ムネアツ!!】世界で唯一「疾風」のエンジン&操縦席の状態、胴体内部も(写真)

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