オニ! アクマ!? 海自のベテランがくぐる“地獄”「とっつぁん幹候」とは? “恐怖の号令”に怯える中年たち

「健康に注意」が最も重要?

 加えて、C幹経験者が口を揃えて言うのが「総短艇が大変」ということ。総短艇とは、日々の生活の中で突然かかる恐怖の号令です。「総短艇用意」の号令がかかると、どんな作業を行っていても即時中断し、数百メートル離れた短艇のところまで全速力で走り、短艇を漕ぎ出すという流れになります。

 なお、最初に到着した人が短艇の指揮を採ることになるため、微妙な駆け引きもあるのだそう。護衛艦などで勤務する場合の「戦闘配置」に似た合図ですが、なにせ距離があるため、腰と膝に爆弾を抱え、血圧もちょっと不安な “お年頃” にはなかなかきついとのことでした。

Large 240328 ots 02

拡大画像

海上自衛隊の幹部候補生学校で行われる短艇訓練の様子(画像:海上自衛隊)。

 ちなみに、幹部候補生学校には学生を指導する通称「赤鬼」「青鬼」という学生付きの幹部がいます。彼らは、C幹のおじさん学生たちと比べて断然若いため、筆者(たいらさおり:漫画家/デザイナー)的には、若者に指導されるほうが精神的にきついのではと思ったのですが、海上自衛官である夫やこさんは「それが仕事だしね」とクールな返答。

「赤鬼」「青鬼」は優秀な者が選ばれるため、指導者としての経験を積む意義が、そして指導を受ける側もまた、社会の先輩として若者をリーダーとして育てる役目を担っていると考えるから、そこまできつくはない模様です。

 しかも、課程終了後には互いをリスペクトできる関係になっていることが多いと話してくれました。こうして聞くと、厳しくとも得るものも多そうに思えます。

 幹部への道を目指す理由としては、現状からステップアップしたい、お給料が上がるなど、いろいろ理由はありますが、隊内で一目置かれるベテランの年齢になってもなお多くの道が用意されている自衛隊。入隊したら決まったレールに乗るのではなく、自分なりの自衛官人生をデザインし続けると言えるのかもしれません。

【了】

【ベテラン隊員が選ぶ「地獄」の道】幹部教育の実態(マンガを読む)

Writer: たいらさおり(漫画家/デザイナー)

漫画家・デザイナー。夫のやこさん、娘のみーちゃんと暮らすのんきなオタク。海自にはまってからあれよあれよと人生が変わってしまった。著書「海自オタがうっかり『中の人』と結婚した件。(秀和システム)」「北海道民のオキテ(KADOKAWA中経出版)」各シリーズ発売中。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。