「最後の国鉄型特急」なぜここまで長生きした? 引退迫る元祖“振り子式”381系 転機となった2つの要因

なぜ381系は置き換えられなかったのか

 投入された1996年の前年には阪神・淡路大震災が発生しています。JR西日本だけで1020億円の復旧費用がかかっていますから、高コストな振り子式特急形電車の新製投入計画が変更されるのは、無理もなからぬことだったでしょう。

 また、2005(平成17)年に発生した福知山線脱線事故は、JR西日本に速度よりも安全性重視の方向に舵を切らせました。車齢だけを見れば古い381系は堅牢な国鉄設計で、かつ腐食しにくいアルミニウムの車体外板を備えていたことで、ほかの国鉄型車両よりも長持ちすることが幸いし、新型車両の導入ではなく、長期使用のためのリニューアルを一部車両で進めることで改善としたわけです。

 それが先述の「ゆったりやくも」です。全ての座席を683系電車と同じものに交換し、和式トイレを洋式に変更、男性小用トイレの設置、窓側足元を圧迫していた通風ダクトの撤去、天井と照明の交換、塗装変更などかなり大がかりなもので、新車同然の内装となりました。

 ちなみに、ここまで徹底したリニューアルがなされなかった紀勢本線の381系は、2012(平成24)年よりスピードダウンを承知のうえで、振り子機能のない287系電車で置き換えられます。

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「ゆったりやくも」以外でも、内装はリニューアルされていた(安藤昌季撮影)。

 381系が50年にも渡る活躍をした要因には、地方幹線の特急へ容易に新車を投入し得ないJR西日本の経営状態もあったでしょう。ただ、曲線通過速度をそれまでより20km/h向上させた高性能さも、活躍を長引かせた理由と考えられます。

 2024年7月以降も、381系は臨時列車として運行される予定です。いつまで活躍するかは分かりませんが、国鉄が産み出した最後の高性能特急形電車が、末永く活躍することを願うばかりです。

【了】

※一部修正しました(4月8日10時20分)。

【同じ車両とは思えん…】パノラマグリーンと化した「やくも」からの眺め

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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コメント

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2件のコメント

  1. 紀勢線でも電化時に381系対応の設備になっているはずですが……。

  2. 国鉄時代の特急 キハ185がまだ現役