一般人も乗れる「水素燃料船」ついに登場! 異形の“フネ版MIRAI” ただ課題ある“世界初”

これが船か…! 発電機の音すらしない船内

 3月27日に小倉港と白鳥沖洋上風力発電施設の間で行われた実証実験では、出発から到着まで水素燃料による運航を実施。往復30km、約3時間45分にわたりCO2(二酸化炭素)を一切排出しないゼロエミモードで航行しました。これは、「水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船での、CO2を一切排出しないゼロエミッション運航は世界初」とされています。

「ゼロエミッションでの運航が無事に成功し、水素が船舶の燃料として十分に使えることが確認できた。加えて言えば『HANARIA』は20総トン以上の船舶としては国内初の水素燃料電池船だ。一つのモデルとして今後の普及につなげていけばと思っている」(海野常務理事)

 実際、報道関係者向けに小倉港内で行われた体験航海に乗船した際、離着岸時は床下から発電機の音と震動が伝わってきたものの、水素燃料電池での発電に切り替わると非常に静かになりました。「HANARIA」は関門海峡クルーズなどに投入されることが決まっており、ディーゼル特有の臭いや震動が無いのは、海の風景を楽しむ観光船としては大きなアドバンテージに繋がると思われます。

 一方で「HANARIA」自体は洋上風車作業船(CTV)として開発されており、海野常務理事も「CTVがメイン」と話しています。しかし国内に設置されている洋上風車はまだ少なく、現時点でビジネスとして成り立ちません。そのため洋上風発市場が大きくなるまでは「観光船として使いつつ、CTVにも使えるような形になる」と述べました。

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ゼロエミッションモードでは水素と酸素で発電して航行する(深水千翔撮影)。

 これに加えて水素燃料のバンカリング(船への供給)についても課題が残っています。「HANARIA」で使用する水素は、福岡県内にあるENEOSの水素ステーションで充填した水素タンクをユニック車で輸送し、岸壁からクレーンを使用して船上に積み込む必要があります。これは、北九州地区で生産される水素は全て使い手が決まっており、「HANARIA」が拠点とする小倉や門司の近くから調達ができないという事情があります。

 MOTENA-Seaの髙尾和俊社長は、脱炭素化の流れが広がる中で水素を探すことが難しくなっていることに触れ、「水素の輸送コストは遠ければ遠くなるほど大きくなる。水素の自己調達に向けて独自に水素の洋上ステーションを整備することも考えている」と話していました。

【デザイン全振りだろ!!】異形すぎる「水素燃料船」の内外装(写真で見る)

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