わずか2年半で消えた「幻のJR新型特急」とは 裏目に出た高性能

多すぎたデメリット

 2013(平成25)年9月、函館本線の大沼駅(七飯町)で貨物列車の脱線事故が発生。原因はレール幅が基準値を超えていたためでした。しかしJR北海道の保線担当者はレール幅のデータを改ざん。ほかにも頻発していた車両トラブルなども相まって、同社の不祥事が社会的にクローズアップされました。行政指導や社会の機運もあり、JR北海道は最優先事項に安全対策を掲げます。

 そのような中で、スピードアップを狙ったキハ285系は、社の方針と乖離してしまったのです。高度な技術を採用した分、そもそものコストが増加したことに加え、複雑な車両構造のためメンテナンスコストもかかること、スピードアップで線路に与えるダメージが大きくなり線路保守コストも増加すること、そしてこれらに十分なコストをかけられないと安全性が低下することが課題となりました。

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「複合車体傾斜システム」概略図。車体を8度傾斜させ、通常は90km/hで走るカーブを140km/hで通過できるとした(画像:JR北海道)。

 つまり、キハ285系はメリット以上にコストや信頼性についてのデメリットがいくつも存在すると判断されたのです。安全対策を最優先していた中、そのデメリット解消に金銭的、人的、時間的コストをかけられる状況ではなく、開発を中止せざるを得ませんでした。

 結果的にJR北海道は、1998(平成10)年から導入しているキハ261系ディーゼルカーを改良し運行しています。

【了】

【画像】「高性能すぎて」すぐ廃車に JR北海道の試作車(キハ285系)とは

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