「日本はまだ追いつける」 防衛技術の博物館は“21世紀の文化” 軍事技術→民間への過程を残す意義

防衛技術博物館は日本に根付くのか?

 宮永さんからは、創る会が設立することを目標としている防衛技術博物館がどういったものなのかが語られました。
 
「産業技術に置いて一番尖った技術である軍事技術が、いかにして民間へ降りていったのか、その過程をしっかり残しておく活動をすべきではないだろうか」。宮永さんはこう話し、防衛技術系の博物館に関して日本は諸外国から遅れていると訴えました。

 宮永さんは例として、戦車保有数で世界最多を誇るイギリスのボービントン博物館を挙げます。今でこそ同館は世界最大規模の防衛技術博物館として、実車両を定期的に動かし、車体を輪切りにしたカットモデル、実車やレプリカを使用した1/1ジオラマなど、様々な展示を行っていますが、宮永さんは「実はボービントンが今の形になったのは1980年代になってからなんです」と明かしましたす。

 それ以前のボービントン博物館は、旧式の戦車が無造作に置かれているだけで「特に工夫はなかった」と宮永さん。しかしそこから、博物館そのものの改革に乗り出し、今や勤務しているキュレーターは全て戦車のエキスパート。このスタッフたちが解説や整備を行う動画を投稿しているYouTubeの公式チャンネルに至っては、初めて博物館の動画で1億ビューを超え、総再生数ではルーブル美術館の動画を超えるそうです。

 次に宮永さんは、オーストラリアの砲兵博物館を紹介。「この博物館は2014年にできたのですが、わずか10年で100両以上の戦車を保有する博物館になっています」と解説しました。

 同博物館の車両の多くは、規模を縮小したアメリカの博物館から譲り受けたものだそうですが、「受け皿があったからこそ、アメリカの博物館が資産を引き渡したというのはあると思います」と話し、場所や人員の確保は重要だと強調しました。

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防衛技術系の博物館の活動は、21世紀の文化だと語る宮永忠将さん(乗りものニュース編集部撮影)。

 こうした防衛技術系博物館のPR活動は、世界的には2000年代以降に本格化した新しい文化だといいます。宮永さんは、「現有の施設という面で日本は遅れてはいるかもしれませんが、始まってしまえば、難航するという状態ではないと思います。まだ追いつけます」と持論を語ります。

「たとえば、先日退役した74式戦車(2023年度で全車退役)をただ展示するだけではなく、動かすとか、まだ世界に公開されていない日本戦車は沢山あります。展示する施設ができれば新しい車両を紹介できる。定期的なツアーを組むことも増えてくる。それが当たり前になれば素晴らしいです」(宮永さん)

 今回のイベントで公開された3車両は、そうした防衛技術博物館設立のきっかけとなる車両であると強調しました。

【了】

【本当に走ってる!】これが当時のエンジンで動く旧軍車両です(写真)

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