「人命救助の最後の砦」空自 救難隊 現役隊員が語るその実像、その現場

人命救助のため集いしプロフェッショナルたち

 那覇救難隊の隊長(取材当時)を務める中垣滋紀2等空佐は、救難隊において最も重要なことは「チームワーク」であるといいます。

「私は昔、戦闘機に乗っておりました。そのため戦闘機の飛行隊と救難隊の違いというのがとても良くわかります。戦闘機も、もちろんチームワークは重要ですが、基本的にパイロット同士の狭い世界で『剣の道』を極めるというイメージです。一方、我々はパイロット、救難員や機上無線員、機上整備員、整備員と心をつなげて、全員が一丸となって動かなければなりませんので、仕事のやり方や考え方がまるで違います」(那覇救難隊隊長 中垣2佐(当時))

 救難隊は、U-125Aに搭乗する4名とUH-60Jに搭乗する5名の合計9名で、いずれかの機の機長のうち先任者が現場における指揮官となり、全員が協力しあうことによって、常に困難な状況に対応して任務の完遂を目指します。

 四方を海に囲まれ、かつ複数のプレートの境界上に浮かぶ島国である日本は、昔から多くの災害に見舞われてきました。記憶に新しい2016年4月の熊本地震をはじめ、災害派遣に出動した救難隊の姿はテレビなどを通じて広く全国中継され、私たちは彼ら救難隊の活躍をリアルタイムで目撃する機会が少なくありません。

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遭難者を救助するため、救難員(メディック)がホイストによってUH-60Jから海面へと降下(写真出典:航空自衛隊)。

 またアニメ『よみがえる空』や映画『空へ 救いの翼』など、救難隊を主役とした作品が大きな人気を呼んでおり、近年は救難隊を志す若者たちが増えているともいわれます。中垣2佐に『空へ 救いの翼』の話題を切りだすと「すばらしい作品をご存知ですね(笑) 私は撮影当時、広報の担当者として協力していたのです」と、少し照れたようにいいつつ、救難隊を目指す若者たちにアドバイスを語ってくれました。

「パイロットがどれだけ優秀であっても、ホイストを扱う機上整備員や救難員がいないと、人命を救助することはできません。戦闘機はミサイルなどのウェポン(武器)を搭載しますが、我々にとってのウェポンは直接、要救助者と接する救難員です。ウェポンといっても生身の人間であることを決して忘れてはならないのです。また我々の任務は平時有事を問わず24時間365日、常にありえます。そして任務を達成し人命を救助できたという事実から、やりがいというものを得やすい、分かりやすい仕事であると思います。ですから、そういった分かりやすさ、また人と人、現場と人との関係を大事にしたいという方には向いているかもしれません」(那覇救難隊隊長 中垣2佐(当時))

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