西武も乗り入れるはずだった東京の「多摩ニュータウン」 幻に終わった原因は

ダム湖への延伸も幻に終わったが…

 それだけではありません。東京都の主導で計画された多摩ニュータウンは、民間企業による開発が制限されました。そのため小田急と京王は、住宅開発による利益で鉄道の建設費をひねり出す方法を使うことができず、厳しい経営を迫られたのです。

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唐木田駅の先にある小田急の車両基地。城山への延伸は中止されたが、ここからJR相模線の上溝駅まで延伸する構想がある(2011年11月、草町義和撮影)。

 こうしたこともあって、2社はニュータウン以西への計画を縮小。京王相模原線は、JRの横浜線と相模線が乗り入れる橋本駅(神奈川県相模原市)まで1990(平成2)年までに延伸しましたが、城山方面への延伸計画は津久井湖の観光需要が思ったほど伸びなかったこともあり、中止されました。

 小田急も多摩線の城山延伸を中止しましたが、小田急多摩センター駅から約2km先に車両基地を建設することになったため、車両基地の手前に唐木田駅(東京都多摩市)を建設。小田急多摩センター~唐木田間を1990(平成2)年に延伸開業しました。

 現在は唐木田駅から横浜線の相模原駅を経由し、相模線の上溝駅(相模原市)まで延伸することが構想されています。2014(平成26)年5月、沿線の町田市と相模原市は、2027年までの開業を目指す方向で一致しました。

 ただ、唐木田~上溝間の建設費は1000億円以上かかるといわれています。小田急の星野晃司社長は2018年5月、記者(草町義和:鉄道ライター)の取材に対し「いまの試算だと、とても利益が出ないことになっています。どうすれば工事費が下がるか、いろいろ工夫して試算していますが、オリンピックを控えて建設費が高くなっていることもあり、下がるような試算が出てきません。そこのところで止まっています」と話し、早期の実現は困難との見通しを示しました。

 城山の“代わり”に上溝まで延伸されることになるのか、あるいは城山と“同様”に幻で終わるのか、今後の動向が注目されます。

【了】

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コメント

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3件のコメント

  1. もし、西武多摩川線が多摩センターまで延伸していたら武蔵境駅の利便性や南武線のアクセスは今以上に伸びていたと思う。
    武蔵境駅は調布よりよっぽど発展していた上、利用者もすごく増えていたと思う。
    是政から府中本町駅まで延伸していたら利便性更に良くなっていたと思います。

  2. 建設費は「全額、都と国が負担」した。
    この記事は間違い。
    京王が負担したのは、橋本まで全線開通した後建設された、多摩境駅のみ。
    小田急も同様に、はるひ野駅のみ。
    「ニュータウン法」により、「全額税金で建設」された。

  3. 小田急にまかせず、唐木田から橋本は市営鉄道にすればいい。
    そうすれば小田急は反対する理由がなくなる。
    相互乗り入れはできるはず。
    京成の住都公団線と同じ。