陸自「戦車乗り」のブーツ なぜ脱げやすいのか? 迷彩服も実は違うもの着てます

九州の精鋭部隊にしか支給されないレアブーツ

「戦車靴」は全国の戦車部隊を中心に支給されていますが、九州に駐屯するごく一部の部隊にしかないものがあります。それが「戦闘靴 水陸装甲用」です。

 これは陸上自衛隊で唯一、水陸両用車(AAV7)を実運用する部隊である水陸機動団戦闘上陸大隊にのみ支給されているものです。

Large 191224 boots 02

拡大画像

AAV7水陸両用車の乗員だけが履く「戦闘靴 水陸装甲用」(2018年4月、柘植優介撮影)。

 基本的な作りは、前述の「戦闘靴 装甲用」と同じく2枚の面ファスナーで止めるかたちですが、色が黒ではなくカーキ(枯草色)である点が特徴です。さらに万一、水陸両用車が海没したり、海上で行動不能になって乗員が海を泳ぐことになっても、靴が浸水で重くならないよう、水抜けの良いポリエステル製で、両足の内側、革部分の最下部には排水用の穴が左右2個ずつ空けられています。

 また、実はブーツだけでなく迷彩服も、戦車乗員のものは一般隊員のものとは異なっています。迷彩パターンは一般的な迷彩服と一緒であるため、一見しただけはわかりにくいのですが、戦車乗員のものは「戦闘服 装甲用」と呼ばれ、生地は難燃性であり、作りも大きく3箇所ほど異なっています。

 ひとつ目は背中の首元(襟下)の取っ手です。これは負傷や気絶などで戦車から自力で出られなくなった場合に、同僚隊員に引きずり出してもらうためのものです。その一方で、一般隊員用迷彩服の背中にある、木枝や草を差すための偽装用ループはありません。

 ふたつ目は胸元から2番目のボタンが面ファスナーになっています。これは背中の取っ手で引っ張り上げた場合、ボタンだと首元が絞まってしまいますが、面ファスナーなら自重で剥がれます。また万一被弾などで上衣に火が付いた場合、面ファスナーさえ外せば簡単に脱げるからという理由もあります。

 そして3つ目の違いは、上衣内側の腰部あたりにひもが通っている点です。これにより、狭い車内でもひもを引っ張れば戦闘服を絞ることができるようになっています。

 このように戦車乗員向けの半長靴や迷彩服は、その任務に最適になるよう、細かく構造が変えられているのです。

【了】

【写真】戦車乗員は背中でわかる。専用迷彩服の作りの違い

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。