有事にどう対処するのか? 東海道新幹線の総合事故対応訓練 多数の写真と図表で

JR東海が毎年行っている大規模な訓練「東海道新幹線 総合事故対応訓練」。2020年は、初めてバラストの流出に対する訓練が行われたほか、脱線復旧も大きく進化していました。多数の写真と図表で、その内容をお伝えします。

この記事の目次

・ここにも新型コロナの影響
・新幹線鉄道事業本部長のコメント
・苦労した台車と車体の連結 大きく進化した脱線復旧
・線路内に多数の飛来物 保守用車(15tクレーン)を使って
・プレートコンパクター マルチプルタイタンパ ジオテキバッグ
・運転士と車掌が連携してパンタグラフ飛来物を除去

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ここにも新型コロナの影響

 JR東海が、毎年恒例で行っている「東海道新幹線 総合事故対応訓練」が、今年2020年も11月5日(木)に三島車両所(静岡県三島市)で実施されました。ただ、例年はJR東海や関係会社の社員ら約1200人が参加しますが、新型コロナウイルスを考慮し、今年の参加者は約600人です。

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JR東海が導入した新しい脱線復旧機材の操作盤(2020年11月5日、恵 知仁撮影)。

 この記事では、そこで公開された訓練について、多数の写真と図表を中心にお伝えします。

新幹線鉄道事業本部長のコメント

 今回の訓練にあたって、JR東海の取締役、常務執行役員で、新幹線鉄道事業本部の本部長である大山隆幸さんは、次のように話しました(一部省略)。

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JR東海の新幹線鉄道事業本部長である大山隆幸さん(2020年11月5日、恵 知仁撮影)。

「当社では、大規模災害や不測の事態に備え、各現場で行う日ごろの定例的な訓練に加えて、本日のような実践的かつ総合的な訓練『総合事故対応訓練』を、毎年実施しています。

 午前中は、新しい機材を用いまして、従来よりも早く安全に脱線を復旧する訓練を取材いただいたところであります。

 午後からは、近年、被害が激甚化している台風などによりまして、線路内に散乱した飛来物、あるいはパンタフラフや架線に付着した飛来物を除去する訓練や、そうした飛来物によって破損した架線の復旧訓練、大雨によって流出した線路下のバラスト復旧訓練を取材いただきます。

 本日はこのほかにも、大規模災害に備えた異常時の対応力を高める各種訓練を実施しています。

 有事の際には、各専門分野の社員、関係会社の社員、それが協力し、一丸となって迅速かつ的確に対応することが求められます。ひきつづきこのような訓練を実施し、各部門の連携力、練度を高めることによって、お客様に『安全で安心してお乗りいただける新幹線』をご提供していきたいたいと考えております」

苦労した台車と車体の連結 大きく進化した脱線復旧

「車体支持式横送り装置及び台車回転補正治具を用いた脱線復旧訓練」は、JR東海が昨年から試作機の公開、導入を進めている新たな機材を使い、その訓練が行われました。

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「脱線復旧訓練」の様子(2020年11月5日、恵 知仁撮影)。

 新機材について担当者は、次のように話します。

「以前とくらべ、だいぶ軽量化されました。重量物が、かなり減りました。コンセプトは『より迅速に安全に復旧できるもの』です。

 一番苦労した点は、車体にジャッキをあてて、車体を持ち上げるようにしたため、台車を車体と一緒にどう持ち上げるか、台車と車体を連結する仕方です。

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「脱線復旧訓練」の様子(2020年11月5日、恵 知仁撮影)。

 元々、新幹線はそういう前提で設計されていませんので、まず『連結する道具』をつけられるかどうか、というところから検証を始め、どのように連結するか検証試験を繰り返し、試行錯誤で実現しました。

 以前は、ジャッキで台車ごと車体を持ち上げたあと、下に機材のレールを通して、1回降ろして、横送りして、またジャッキを入れて、上げて、レールを取って降ろす、と、工程が結構複雑でした。

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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