料金変わると「渋滞が減る」一体どういうこと? 「阪神高速」の新料金 メリット多大なそのワケとは〈PR〉
阪神高速が2024年6月1日(土)に料金改定を行います。主なポイントは「上限料金の変更」。一部の人には確かに負担増になるものの、同時に設定される各種割引のメリットもかなり大きそうです。実際どう変わるのでしょうか。
「上限料金変更」の対象になるのは「1割」!?
来る2024年6月1日(土)、阪神高速の料金が改定されます。大きな変更点はふたつ、「上限料金の変更」と「各種割引の導入および拡充」です。
これまでの料金制度では、ETC車は走行距離に応じて下限料金が300円、上限料金が1320円(ともに普通車、以下同)に設定されていました。
上限料金に達する距離は32.3kmでしたが、今回の改定で上限に達する距離は51.7kmとなり、上限料金も1950円に設定されます。
ではこの料金の改定で、どのくらいの利用者が影響を受けるのでしょうか。
阪神高速は、ETC車での距離別の利用比率(2022年9月平日平均)について、32.3km以下が約9割、32.3km超が約1割としています。
つまり、上限料金の見直しで負担増になる走行は、全体の約1割というわけです。
この32.3km超という距離は、たとえば大阪市中心部の法円坂(13号東大阪線)を入口とすると、ちょうど神戸市中心部の生田川(3号神戸線)まで走るという走行経路になります。
つまり、6月以降負担増になるのは、こうした約1割の大阪・神戸中心部間を超えて移動するといった長距離利用の場合です。
大阪や神戸の都市圏内における通勤や買い物などで阪神高速を使う人にとって影響は限定的であり、料金改定は長距離を走ることによる“応分の負担”が反映されたものとも言えます。
そして6月以降、同じ入口からの走行で1950円の上限に達するのは、前開(7号北神戸線)など、神戸市中心部のさらに向こう側という、かなりの長距離移動になります。
なお現金車については、これまで入口料金所でETC車の上限料金にあたる1320円を支払う必要がありましたが、今後は1950円が適用となります。
ただし、終点までの距離が短い区間(一部端末区間)については、これまでどおり、終点までの距離に応じた料金となります。
ではなぜ今回、阪神高速は料金の改定を行うのでしょうか。
料金水準を統一しても「安い」阪神高速の料金
現在の通行料金の仕組みは「走行距離に応じた料金制度」を主眼に、整備経緯の違いなどから料金水準が異なっていた近畿圏の高速道路の料金体系を整理、統一するため、2017年に導入されました。
制度の設計にあたっては、路線ごとに異なっているETC車の「距離単価」を高速道路の大都市近郊区間の水準に合わせること、また「車種区分」も原則として、軽自動車および二輪車、普通車、中型車、大型車、特大車に整理、統一することで不公平感をなくすことを目指しました。
さらに大阪および神戸都心部への流入に関しては、交通分散の観点から、経路によらず、起点・終点間の最短距離を基本に料金を決定することとしました。
ただし、物流への影響や、現金車の負担増を考慮し、「激変緩和措置」として上限料金が設定されていたのです。
大阪都心の高速道路から建設、供用が始まった阪神高速の料金は、路線の延長に合わせて改定されていきましたが、均一料金制をとっていたこともあり、長距離利用者と短距離利用者の料金負担の不均衡が生じていました。
その不均衡を解消するため、2012年に対距離料金へ移行し、さらに2017年の改定でNEXCOの水準に合わせることになりましたが、急激な負担増を考慮して32.3km以上走っても、料金を1320円に据え置く上限料金が設定されたため、”不均衡”は解消されていませんでした。
今回の料金改定は、この上限料金の適用範囲を見直し、「対距離制を基本とした公平な料金体系」をさらに進めるために行われます。
これまで以上に充実した「割引制度」
従来の料金制度では、32.3km以上走っても、料金は1320円で据え置きです。このため、阪神高速の方が長距離利用は安くなり、通過交通が「混雑する都心部をあえて選択する」実態がありました。
具体的には、近畿自動車道や中国自動車道などに比べ料金が安い阪神高速を使う利用者により、通過交通が大阪都心や神戸都心に流入し、渋滞の原因になっていました。
上限料金の改定は、こうした「安い阪神高速の料金水準」を、NEXCOの高速道路にあわせ、都心部を通過する交通の分散や流入の抑制を担うことになります。
その一方で、今回の改定では、NEXCO西日本管内をまたぐ利用で生じる料金差を埋めるなどして、「迂回(うかい)をしやすくする」ための割引制度も盛り込まれます。
阪神高速は、これに今回の料金改定による増収分を充て、渋滞の抑制につなげるとしています。
なかでも割引制度の柱となるのが、「大阪都心迂回割引」「神戸都心迂回割引」「深夜割引」です。
●大阪都心迂回割引(ETC)
4号湾岸線と6号大和川線が交わる三宝JCT以南の各出入口と、名神高速道路等・第二京阪道路・第二阪奈道路等(東大阪JCT以遠)の指定された区間の出入口を相互にETC通行する場合、6号大和川線および近畿自動車道を経由しても、大阪都心経由経路の最安料金を適用するというものです。
こうした区間を利用する場合、これまでは阪神高速と近畿自動車道の料金を別々に計算していたため、上限料金のある阪神高速を長い区間走るほうが割安となっていました。
しかし今回の料金制度の改定により、大阪都心迂回割引が適用される区間では、阪神高速を長く使っても、6号大和川線および近畿自動車道を経由しても、同一料金となります。
●神戸都心迂回割引(ETC)
これも大阪都心迂回割引と考え方は同じです。
この割引では、明石方面と、名神高速道路等・第二京阪道路・第二阪奈道路等・西名阪自動車道・南阪奈道路等(吹田JCT以遠 )の指定された区間の出入口を走行する場合、7号北神戸線および中国自動車道を経由しても、神戸都心経由経路の最安料金を適用します。
従来、この区間の中国自動車道は、大阪府と兵庫県を結ぶ大動脈として渋滞が起こりがちでした。
しかし2017年から2018年にかけ、中国自動車道を補完する並行ルートとして新名神高速道路が開通し、中国自動車道からの利用の転換が進みました。
これにより中国自動車道を阪神高速の迂回路として活用できるようになり、この割引が実現しました。
このふたつの割引により、これまでの「混雑しているけど安いから大阪、神戸都心部を走る」という通過交通が、料金差を気にせず近畿自動車道や中国自動車道を走れるようになります。
大阪都心~神戸都心の移動や、郊外から大阪都心・神戸都心の相互利用では、これまでと同等の料金負担で、より渋滞が少なく快適な移動が実現すると考えられます。
●深夜割引(ETC)
さらに、午前0時から午前4時の間に阪神高速に流入するETC車(判定は阪神高速の最初の入口のETCアンテナとの通信時間を基準)に適用される深夜割引は、通行料金が20%割引になります。
これにより利用時間の転換が進み、日中や朝夕の渋滞緩和につながると期待されています。
このほか今回の料金改定では「神戸都心流入割引」や「大口・多頻度割引」の拡充に加え「大和川線・堺線乗継割引」、「関西国際空港方面割引」といった新たな割引も導入されます。
阪神高速では、公式サイトに料金改定の特設ページを設けており、同ページの「料金・経路検索」から、6月1日以降の料金が確認できます。
7年間でネットワークは大きく進展 料金も「変える」
2017年に行われた料金改定では、関西圏の高速道路のネットワークに構築途上の部分があり、大阪都心部、神戸都心部を迂回するクルマの受け皿が不十分でした。
しかしこの間に、新名神高速道路、阪神高速6号大和川線などの整備が進んだことで、迂回ルートの選択肢が拡大しました。
これが、今回の料金改定での「対距離制を基本とした公平な料金体系」「起終点を基本とした継ぎ目のない料金」のさらなる実現につながったと言えるでしょう。
ますます便利で使いやすくなる阪神高速に期待しましょう。
【了】
Writer: 植村祐介(ライター&プランナー)
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。