「片翼の飛行機」は実在したのか? それが奇跡といえる理由

国内でも海外でもあたった「片翼の奇跡」

 第二次世界大戦前の中国戦線で、旧日本海軍の樫村寛一操縦士が操縦する九六式艦上戦闘機「樫村機」が、中国戦線での空中戦で中国軍機と空中接触し、左翼の翼端から三分の一程度を切り取られてしまいましたが、その後約600km飛び無事帰還しました。当時この出来事は、記録映画や絵葉書になるほど有名になりました。

 なぜ操縦できたかは筆者も疑問に思うところではあるものの、有力な説があります。九六式艦上戦闘機のエルロンは3か所のヒンジで主翼とつながっているのですが、絵葉書にもなっている樫村機の写真を見ると、切断された部分は2個目のヒンジより外側で、2か所のヒンジは生きているとも考えられます。ここは、三菱重工の元設計副主任・曽根嘉年氏も著書で「二か所のヒンジがあれば操縦できるのでは」と述べているところです。

Large 02
南昌攻撃で片翼を失いながら飛行する九六式艦上戦闘機「樫村機」(画像:「空」1938年3月号より)。

 このほか、アメリカでは2015(平成28)年に、右の主翼を空中接触で失ったオクラホマ州空軍のF-16が無事帰還した例なども報告されています。

 これらは主翼がないというより、“主翼が欠けた”に近いケースでしたが、長い航空の歴史においては、これよりもっと”完全な片翼“に近かった事例もありました。

 1983(昭和58)年にイスラエル空軍は、南部のゲネヴ砂漠で、飛行場の防衛のための軍事演習が実施され、A-4「スカイホーク」攻撃機とF-15戦闘機が模擬戦闘中に衝突したのです。「スカイホーク」は空中分解しパイロットは脱出、一方でF-15は2名をのせたまま10マイル(約16km)離れた最寄りの飛行場へなんとか着陸します。実はこのとき、右主翼は外側の翼の部分で切断されていましたが、なんとパイロットは着陸するまで、片翼状態に気づかなかったとも。これは、損傷した胴体から吹き出した燃料が、視界を遮っていたためとされています。

 ただ、片翼で無事にたどり着いた例は100年以上の飛行機の歴史でこの程度しかなく、まさに奇跡ともいえるでしょう。ちなみに、ヘリコプターなどの回転翼航空機は、主翼が回転していることから、一枚でもバランスを崩すと航空機としては飛行できないというのが一般的な見解です。

【了】

この記事の画像をもっと見る(2枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. 「片翼の小さな飛行機」は片腕しかない人を表している。片腕になった人はほとんど偶然に何らかのことがあって片方の腕を失ったから、記事の通り、「片翼の飛行機」も偶然に何らかのことでそうなったのがほとんどで、最初から片翼にするのは考えられない。