目的は“北千住で降りないで” 東武「浅草・押上う回制度」 2ルート定期券の先駆?

行きは地下鉄直通で、帰りは始発駅から、といった2路線利用を1枚で可能にする二区間定期券。その先駆ともいえる制度が、かつて東武スカイツリーラインに存在しました。しかし10年を経ず廃止に。実は苦肉の策で生まれたものでした。

便利な「二区間定期券」っぽい「う回制度」

 朝の通勤は地下鉄直通ルートで都心へ、帰りは新宿や池袋といったターミナル駅から帰宅――そのような利用を1枚の定期券で許容する「二区間定期券」を、いくつかの私鉄が設定しています。

 たとえば、池袋~練馬間を西武池袋線・東京メトロ有楽町線どちらでも利用できる「だぶるーと」、京王線の新宿駅、井の頭線の渋谷駅などを対象とした京王電鉄の「どっちーも」、小田急線~東京メトロ千代田線の定期で小田急新宿駅の利用も可とする「小田急・東京メトロ PASMO二区間定期券」などです。いずれも通常の定期に追加料金がかかります。

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2020年まで日比谷線直通用に使われていた東武20050型。ホームの両端に階段のある駅が多い日比谷線の混雑緩和のため、前後各2両は5扉(画像:東武鉄道)。

 東武鉄道では、和光市~池袋間で東上線と東京メトロ有楽町線の利用を可能にする「二東流」を発行していますが、かつては伊勢崎線(東武スカイツリーライン)にも、同じような定期券の“制度”がありました。「浅草う回制度」「押上う回制度」と呼ばれるもので、無料の制度として存在したものの、どちらも10年に満たず終了しています。

 まず1988(昭和63)年に始まったのが、「浅草う回制度」です。“小菅駅以遠~(北千住乗り換え)~地下鉄日比谷線~(上野乗り換え)~地下鉄銀座線内”の定期を持つ人を対象に、平日朝ラッシュ限定で、“浅草駅経由で銀座線に乗り換え可”とするものでした。日比谷線経由より時間はかかりますが、浅草から銀座線の始発に乗れ、上野駅での乗り換えの混雑も避けられました。

 そして1990(平成2)年には「押上う回制度」が始まります。これは、“曳舟駅以遠~(浅草乗り換え)~都営地下鉄各駅”の定期を持つ人を対象に、浅草の一つ手前の業平橋駅(現・とうきょうスカイツリー)駅から都営線に乗り換えられるというもの。これに際し、当時あった業平橋駅の貨物ヤードに10両対応のホームを増設、さらに押上駅との連絡通路も開設しています。この押上う回制度は終日利用できました。

 どちらも紙の定期券の時代です。東武・営団・都営が連携し、券面に押される「浅草う回」「押上う回」のスタンプを駅員が見て、う回乗車であることを確認していました。

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