「もう二度と作れません」伊豆&北海道を走る「THE ROYAL EXPRESS」は未来の鉄道へつなぐバトン 水戸岡さん語る

デザイナー・水戸岡鋭治さんが託した「鉄道の未来」

 この「THE ROYAL EXPRESS」をプロデュースしたのが、デザイナーの水戸岡鋭治さん。九州の特急「つばめ」787系電車を皮切りに、キハ71系気動車「ゆふいんの森」、800系新幹線など数多くの鉄道車両をデザインし、「ななつぼしin九州」「或る列車」など観光列車のプロデュースも手掛けています。

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自身がデザインした「THE ROYAL EXPRESS」から、伊豆の海を眺める水戸岡鋭治さん(乗りものニュース編集部撮影)。

 その水戸岡さんの集大成とも言える車両が「THE ROYAL EXPRESS」です。東急の松田高広さん(交通インフラ事業部 事業運営グループ 統括部長)が惚れ込んで「突撃」し、デザインをお願いしたといいます。

 車内の意匠は既製品を廃し「本物」にこだわったという水戸岡さん。プラスチックは使わず、可能な限り鉄や木材、ガラスを素材に使用し、職人の手で作り上げたものだといいます。金をあしらった木組みの天井は、鉄道以外を見渡してもなかなか見られない贅沢さ。調度品からクッションまで、全て特注品で揃えたのは「たった2m70cmの幅の室内空間で、どこにもない贅沢で豊かな体験をしてもらいたい。そのためには、利便性と経済性が重視されがちな時代に、それとは真逆の、手間暇をかけたものを提供したかった」と話しました。

 そのこだわりの底には、もともと家具屋の家に生まれ、物心ついた頃から職人の手による工芸品に触れてきた下地もあり、つねに「最高の環境を提供したい」という思いがあるといいます。

 小さな子どもが最初に触れた列車が「最高に良いもの」との出会いで、鉄道とはこういうものなのか、という意識が生まれる、そういった「環境」が大事なのだと話します。

「旅は何度行っても、同じ景色には出会えず、人とのふれあいも毎回違う。そんな旅は人間にとって大切なもので、その旅の最高の舞台となるよう、いまだかつてない車両で、最高のサービスや食事を人々に与えられるものであってほしい。そうすれば日本は観光立国として、世界から桃源郷のように感じてもらえるようになれるはずです」

 最後に水戸岡さんは、「もう同じ作品は二度と作れません」と前置きしたうえで、「みなさんの若い力にかかっています。もっと豊かに、清く正しく美しい、そんな鉄道文化を守っていってください」と私たちに語りかけました。

【了】

【「最高」が詰まった「THE ROYAL EXPRESS」車内を見る】

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コメント

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1件のコメント

  1. 車内は豪華でも下回りまで回りかね?