自賠責の返済100年かかる!? 財務省の6000億円借入問題 返済額どうなる かつてはゼロ円17年

年54億円の返済で、完済まで100年かかる?

 過去の財務省の返済実績を振り返ると、貸し出された積立金は1兆1200万円(1994/1995年度)。単年度のピーク時返済は2000億円(2000/2001年度)あった一方で、前出のとおり28年間のうち17年間は、まったく返済がありませんでした。当時の財務省は「財政事情に照らしてやむを得ない」と説明しています。

 ただ、2017年に麻生太郎前財務相と石井啓一元国土交通相と交わされた覚書で、こんな一文が付け加えられたことにより、0円返済は解消されました。

「毎年度の具体的な繰戻額については、被害者等のニーズに応じて被害者保護増進事業等が安定的、継続的に将来にわたって実施されるよう十分に留意しつつ...」

 この新たな覚書から返済が継続して再開されました。2018年~2022年までの返済額は23億円、49億円、48億円、55億円、66.5億円(予定)と増えています。

 大臣間の合意には有効期限があり、2021年12月22日に鈴木財務相と斉藤鉄夫国交相は、2023年度予算からの最新の合意を交わしています。新しい合意には、返済額の水準について「2022年度予算における繰戻額の水準を踏まえ……」という、一応の目安が示されました。

 今まさにその議論が続いている中で、鈴木財務相はこう説明します。

「繰戻しに継続的に取り組むことの重要性は私も十分意識をしている。一般会計から自動車安全特別会計への繰戻しは、引き続き財務省として財政事情が厳しい中でも国土交通大臣との大臣間合意に基づいて、被害者保護に係る事業が安定的継続的に実施されるよう、2023年度の予算編成を含めて、国土交通省と真摯に協議をしながら、しっかりと一般会計からの繰戻しを着実に進めていきたい」

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2022年12月21日に行われた財務省と国交省の大臣折衝(財務省提供)。

 それでも返済額が気になります。返済額の目安とされた2022年度予算の繰戻額は当初予算で54億円、補正予算で加算され合計66.5億円になりました。

 これが基準になると、5952億円の完済は、単純計算で110年後。気が遠くなるほど遠い話になります。

【了】

【なぜ!?】自賠責“国民負担増”に至る経緯(画像)

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Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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コメント

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1件のコメント

  1. せめて次官と担当局長~課長クビにして放り出せ。
    返せないですだけで済むわけないだろ