西武線内“ゼロ駅停車”の珍列車 各停なのに実は「急行」!? そして池袋→長瀞は最速

有料急行「秩父路2号」などよりも速い

 御花畑駅で列車の表示を見ると、「各停 長瀞」のまま。普段はここから「急行」表示に変わるはずですが、何か手違いがあったようです。ただ、西武秩父線内に停車駅はないのですから、横瀬始発については最初から「急行」表示でよいと思うのですが。

 驚いたことに、御花畑駅からは70人以上が乗車してきました。先行していた「ちちぶ9号」から、ここで乗り換える意味はありませんし、そもそも西武秩父駅から5分で乗り換えるのは難しいので、地元の利用者が多いのでしょうか。

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西武秩父駅の手前で秩父鉄道線へ。先ほどまで乗っていた特急「ちちぶ9号」をかすめるように転線(2023年5月、安藤昌季撮影)。

 実際、この料金不要ながら急行運転する「横瀬始発長瀞行き」は便利な列車です。御花畑~長瀞間を17分で走行しますが、これは有料急行「秩父路2号」の19分、「秩父路4号」の18分よりわずかに速く、同区間を最速走行します。車両も、秩父鉄道の料金不要列車は一部の例外を除きロングシートですから、ボックス型クロスシートの4000系は、有料急行に近いグレードです。

 比較する意味はほぼありませんが、秩父鉄道のSL列車「パレオエクスプレス」にも使われている、かつての国鉄急行形12系客車の座席間隔は1580mmです。この4000系は1640mmですから、「国鉄急行よりゆったりとしたクロスシート」だと思うと少し豪華な気分になれます。

 10時59分着の秩父駅でわずかに乗客を増やし、11時9分着の皆野駅(埼玉県皆野町)で行楽客が十数人下車しますが、大半の乗客は長瀞駅まで乗車するようです。車内では「急行運転しますが、急行料金は不要です」と繰り返し案内が行われるところに、この列車の“レア度”が表れています。

 クロスシート車の快適な車内から車窓を楽しむうちに、あっという間に長瀞駅に到着。時刻は11時15分です。9時30分に池袋を出てから、長瀞までわずか1時間45分の“最速”乗り継ぎでもあります。横瀬駅での対面乗り換えはかなり便利で合理的だと筆者は感じたので、もっと宣伝されてもよいと思いました。

 終着の長瀞駅からは、ライン下りの観光を楽しんでもいいですし、11時42分発の「SLパレオエクスプレス」を待って、秩父鉄道の終点 三峰口駅を目指してもよいでしょう。

【了】

【おや…】表示する気になれば出せる「急行」

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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