「富士山の登山鉄道」山梨県が実現へ本腰 技術的な調査へ乗り出す 運賃は「往復1万円」?

山梨県が富士山の5合目まで鉄道を整備する「富士山登山鉄道構想」の検討に本腰を入れます。課題は山積みですが、技術的な課題の調査に乗り出すようです。

現実味? 富士山の「登山鉄道」

 山梨県が、富士山のふもとから5合目(吉田口)まで鉄道を通す「富士山登山鉄道構想」の検討を加速させます。県は2023年度の6月補正予算に、新規事業として鉄道構想の事業化検討費(6202万円)を計上。具体化に向けた官民の役割分担や、整備手法などを検討していく方針です。さらに7月、技術的な課題の調査を委託する事業者の公募を開始しました。現実味を帯びつつあるこの構想、どのような内容なのでしょうか。

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スイスの登山鉄道(画像:写真AC)。

 富士山は来訪者が増加傾向にあり、渋滞や混雑、ゴミの投棄といった環境負荷が増大しています。LRT(小型で軽量な軌道系交通システム)が想定されている登山鉄道は、自動車からの転換を促して環境負荷を抑えることを目指しています。また、鉄道整備と合わせて5合目までの電気・上下水道などライフライン整備も検討します。
 
 山梨県は2021年2月に「富士山登山鉄道構想(案)」を策定しました。それによると、河口湖付近から富士山5合目までを結ぶ有料道路「富士スバルライン」を活用することが想定されています。約28kmの区間に起点となる「山麓駅」「中間駅」、終点の「五合目駅」を整備。山麓駅には主に車両基地やバスターミナル、中間駅と五合目駅には展望機能などを設ける予定です。
 
「日本一高い富士山に登る鉄道」となると急勾配を想像しがちですが、スバルラインの勾配は平均5%程度となり、LRTで建設することが可能です。所要時間の見込みは山麓駅から五合目(上り)が約52分、五合目から山麓(下り)は約74分としています。車両は富士山の景観や保守管理に配慮し、架線レス方式を基本に検討を進める方針です。
 
 山梨県は運賃設定によって来訪者数をコントロールできるとしており、往復運賃1万円で年間利用者約300万人、2万円で約100万人と試算。富士山観光の付加価値となるような上質な鉄道とすることが想定されています。

 ただ、構想実現に向けては課題も多くあります。今回調査に乗り出す技術的な課題だけでも、厳冬期を含む車両の登坂力・制動力や架線レスシステムの検証、運行支障に関する対策などがあげられます。さらに事業スキームのほか、環境影響評価の実施、富士山が噴火した場合の対応なども壁となります。また、LRTの山麓駅と富士急行線(富士山麓電気鉄道)の接続も考える必要があります。
 
 富士山の登山鉄道整備は、古くは戦前から構想がありましたが、果たして実現するのでしょうか。
 
【了】

【えっ、「富士山登山鉄道」のイメージ】

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