「電気代が足りない!」天下の国立科学博物館 なぜクラファンで資金調達せざるを得なくなったか 国は何を?

コロナ禍とウクライナ侵攻がダブルパンチに

「まず科博は独立行政法人という形態であり、そのため全ての運営資金を国に頼っているわけではない」と篠田館長は説明します。

「独法へ移行した時から外部資金の比率を高め、なるべく多くを外部資金で賄えるようにするという方針がある。今は8割ぐらいが国からのお金で、2割ぐらいが入場料などの外部資金となっている」(篠田館長)

 コロナ前の2019年度予算を見てみると、収入約33億円のうち国からの補助金に当たる運営費交付金は約27億円、外部資金を含む入場料等収入は約6億円を見込んでいました。予想より来館者が多く入場料収入が上振れば、それを使って大規模な企画展や保管施設の整備といった新たな事業を行うことが可能になります。

 科博はこうしたスキームで20年にわたって運営を行ってきましたが、そこに新型コロナウイルスのパンデミックが直撃しました。

「突然、入館料収入が大きく落ち込み、その一方でどうしても使わないといけない光熱費がぐんと上がった。こうしたいくつかの要因が重なったときに即応できず、資金が足りなくなってしまった」と篠田館長は語ります。

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国立科学博物館の現状について話してくれた篠田館長(深水千翔撮影)。

 感染症対策として休館が続き、2019年度決算では約7.5億円だった入館料収入は、翌2020年度は約1.5億円まで減少。2022年度決算では6.5億円まで持ち直したものの、同年2月にロシアがウクライナへ侵攻したことでエネルギー価格が高騰します。その影響で、経常費用のうち業務費と管理費を合算した水道光熱費は2019年度決算では1.8億円でしたが、2022年度決算では3.1億円まで上昇しました。

「コロナ禍は予算が決まった後に起こったため、20年度は内部の資金を切り崩し、21年度は緊縮財政で乗り切った。22年度も全体業務を縮小して運営しようと考えたが、今度はウクライナ侵攻の影響で光熱費が上がりだす。4月ぐらいに計算したところ、11月か12月に運営資金がなくなるという話になり、縮小していた予算の中から研究費を含めて、全館的に未執行分の返還をお願いする事態に陥った。これは研究者に研究を止めろと言うに等しい事態で、本来は絶対に避けなければならなかった」(篠田館長)

 2023年度も予算を大幅に減らして運営する計画を立てたものの、光熱費の上昇がさらに続くことが判明します。物価高の影響で保管容器やエタノールなどの保存液の価格も上昇が続き、新しい収蔵庫を作るのに必要な資機材の価格や人件費も高騰。このままでは運営を継続できなくなることは目に見えていました。

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コメント

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2件のコメント

  1. 本当に必要なものなら、税金などつかわず国民の自発的な寄付だけで運用できるはずなんだけどね。
    寄付が集まらないならそれは「いらない」という民意。
    「金はださないが必要だ!!!」は幼児の駄々。

    • 日本は国際的にはお金持ちの国では?国立天文台のクラファンといい、お金を産まなそうな分野には金は出さないほど財政が厳しいんですか?近視眼的な国民性が現在の日本の下り坂の原因だと思いますがね。